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荒川河畔の「原住民」(27)

「今がチャンス」ホームレスになるため、40歳を過ぎて大阪から上京した男性

2025年4月11日(金)18時05分
文・写真:趙海成
自転車で日本全国を巡るつもりだった15年前の宇海くん

自転車で日本全国を巡るつもりだった15年前の宇海くん(写真:本人提供)

<荒川河川敷のホームレスになるために大阪から来た1人の男性。彼がその道を選んだ理由には、これまで紹介した荒川河川敷の「師匠」たちの存在が大きく関係していた。在日中国人ジャーナリスト趙海成氏による連載ルポ第27話>

今回の物語の主人公、宇海くん(仮名)は、大阪から東京に来たばかりの43歳の男性である。

彼の大きなスーツケースにはすべての生活必需品が詰め込まれており、その中には、登山用のテントとアウトドア用の小さなガスコンロもある。この2つだけでも、彼が東京でアウトドア生活をするつもりだと分かる。

実は、宇海くんが野外生活を送るのは初めてではない。

15年前、彼は自転車で日本各地を巡った。1カ月で中国、四国、九州の各地を回り、その後に関西を巡ってから関東へ向かおうとしたとき、交通事故に遭った。彼は軽い怪我を負い、自転車も壊れてしまった。結局、東京には行かず、大阪に戻った。

それから15年たった今、宇海くんはついに東京にやって来た。自転車ではなく、新幹線に乗って。

今回の目的は、東京観光でも、仕事探しでも、友達や親戚を訪ねるためでもない。

では、何のために上京したのだろうか? 聞いて驚くかもしれないが、彼の目的は、東京の荒川河川敷でホームレスになることなのだ。

その理由を明らかにするには、彼のこれまでの人生経験から話すのがよいと思う。

親は「テキヤ」、歯医者に連れて行ってくれなかった

宇海くんは1982年に四国の愛媛県で生まれた。4歳の時に両親とともに大阪に移り、小中高時代は大阪で過ごした。

彼は一人っ子で、子供の頃の楽しい思い出は少ない。家族旅行や、親と一緒に映画を見るような経験は、ほとんどなかったという。

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