最新記事
韓国

ユン大統領罷免を言い渡した憲法裁裁判官は「平均的国民から抜け出さない」と誓い司法人生を終えた

2025年4月18日(金)20時05分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

弾劾審判の判断基準と時間がかかった理由

6年間の最高裁裁判官の退任前日の17日、ムン代行は仁荷大学法学専門大学院で特別講義を行った。未来の裁判官たちを前にムン代行は弾劾審判の基準について「寛容と自制がなければ民主主義は発展できない」と説明した。

「弾劾訴追は寛容と自制の基準を越えておらず、非常戒厳は越えたというのが私たちの判断」と述べた。

また弾劾審判を下すまでに長い時間がかかった理由については、「野党に適用される権利が与党にも適用されなければならず、与党に認められる節制が野党にも認められてこそそれが統合だ。自分に適用される原則とあなたに適用される原則が違えば、どうして統合できるだろうか。その統合を私たちが訴えてみよう、それが弾劾宣告文の主題だった。それで時間が長くかかった」と強調した。

また、「弾劾訴追は国会の権限だから問題ない。このように話すと、非常戒厳は大統領の権限ではないかと言われるが、それでは答えを見つけることはできない」と述べ、「寛容と自制を越えたか否か、現在まで弾劾訴追はそれを越えておらず、非常戒厳はそれを越えたというのが憲法裁判所の判断だった」と説明した。

憲法裁判所が全うすべき使命とは──

2025年4月18日、ムン・ヒョンベ憲法裁判所長権限代行とイ・ミソン憲法裁判官は6年の任期を終えて退任した。ソウル鍾路区の憲法裁判所本館1階の大講堂で開かれた退任式には、7人の裁判官をはじめ、家族や知人、憲法裁職員が大勢出席した。

ムン代行は退任の辞で「憲法裁判所が憲法が付与した使命を全うするためには次の3つが補充されなければならない」として「裁判官構成多様化」「さらに深い対話」「決定に対する尊重」が必要だと強調した。

特に裁判官構成の多様化については「集団思考の罠に陥らず、多様な観点で争点を検討するため」として「憲法実務経験が多い憲法研究者や教授に憲法裁判官になる道を開かなければならない」と提言した。また深い対話については「他人の意見を傾聴する過程と、傾聴後に自身の意見を修正する省察の過程を含む」と説明した。

憲法裁の決定については、「学術的批判は当然許されるべきだが、対人論証のような非難は止めなければならない」と述べ、「大統領中心制国家では、大統領と国会の間に葛藤が高まり、対話と妥協を通じた政治的解決が失敗に終わったことで膠着状態が生じた場合、これを解消できる装置がない」としながらも、「憲法裁判所が権限争議のような手続きで事実性と妥当性を備えた決定をし、憲法機関がこれを尊重することで膠着状態を解消できる」と強調した。

ムン代行は高校の恩師や同窓生、憲法裁内のテニス同好会やウォーキング同好会のメンバーたちにも感謝を伝え、「市民の一人に戻って自分なりの方法で憲法裁を応援する」と締めくくった。退任後は故郷である釜山に戻り、しばらく休息を取る予定だという。

投資
「FXで長期投資」という投資の新たな選択肢 トライオートFX「世界通貨セレクト」とは?
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ米大統領、日韓などアジア歴訪 中国と「ディ

ビジネス

ムーディーズ、フランスの見通し「ネガティブ」に修正

ワールド

米国、コロンビア大統領に制裁 麻薬対策せずと非難

ワールド

再送-タイのシリキット王太后が93歳で死去、王室に
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
2025年10月28日号(10/21発売)

高齢者医療専門家の和田秀樹医師が説く――脳の健康を保ち、認知症を予防する日々の行動と心がけ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    超大物俳優、地下鉄移動も「完璧な溶け込み具合」...装いの「ある点」めぐってネット騒然
  • 2
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した国は?
  • 3
    「宇宙人の乗り物」が太陽系内に...? Xデーは10月29日、ハーバード大教授「休暇はXデーの前に」
  • 4
    シンガポール、南シナ海の防衛強化へ自国建造の多任…
  • 5
    為替は先が読みにくい?「ドル以外」に目を向けると…
  • 6
    「信じられない...」レストランで泣いている女性の元…
  • 7
    ハーバードで白熱する楽天の社内公用語英語化をめぐ…
  • 8
    「ママ、ママ...」泣き叫ぶ子供たち、ウクライナの幼…
  • 9
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 10
    【ムカつく、落ち込む】感情に振り回されず、気楽に…
  • 1
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 2
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 3
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 4
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 5
    超大物俳優、地下鉄移動も「完璧な溶け込み具合」...…
  • 6
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 7
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 8
    【2025年最新版】世界航空戦力TOP3...アメリカ・ロシ…
  • 9
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した…
  • 10
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 3
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 4
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 5
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 6
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 7
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 8
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中