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関税・経済の理解ゼロ、恐怖を煽る政治...トランプの暴走を止めるため反対派がとるべき「対抗策」

COUNTERING POLITICS OF FEAR

2025年3月31日(月)16時15分
浜田宏一(元内閣官房参与、米エール大学名誉教授)

アメリカの輸入品に課される関税を負担するのは、直接にはアメリカの輸入業者であり、そのコストはアメリカの消費価格に転嫁される。従って、政府の税収は増えるかもしれないが、アメリカの企業や消費者は物価上昇に苦しむことになる。

アメリカが中国製品に一律10%の追加関税を課したことに対し、中国は2月、一連の報復関税を発動した。これを受け、トランプはさらに10%の追加関税を決めた。トランプは輸入される全ての自動車などへの関税措置も発表しており、同様の報復措置を招く可能性が高い。


こうした関税合戦で先に折れるのは、アメリカの貿易相手国のほうだと、トランプは思い込んでいるようだ。確かに一定の譲歩を得ることはあっても、貿易戦争に勝者はいないことは、歴史がはっきりと示している。アメリカが2万品目以上に法外な関税を課した1930年関税法は、世界的な貿易戦争の引き金を引き、大恐慌を悪化させた。

トランプの移民政策も、恐怖をあおる政治の典型だ。移民は賃金を押し下げ、治安を悪化させると有権者の不安をあおり、大規模な移民追放策への支持を集めてきた。

だが、アメリカは「移民の国」であり、いつの時代も、移民はアメリカ人のアイデンティティーや繁栄と切り離せないものだった。トランプが日常的に悪者扱いする不法移民でさえ、米経済にとてつもなく大きな貢献をしている。不法移民を130万人強制送還するだけで、アメリカのGDPは2028年までに1.2%、雇用は1.1%減少するとの試算もある。

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