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荒川河畔の「原住民」(26)

「炊き出し」現場ルポ 集まったのはホームレス、生活保護受給者...

2025年3月28日(金)19時05分
文・写真:趙海成

しばらくして彼が戻ってくると、数字の書かれた紙を持っていた。

「おかげさまで、受取番号をもらいました。213番です」と言った。

先ほど私が親切にしたからか、わざわざ戻ってきて、私にいろいろな話をしてくれた。

炊き出し

左:生活保護受給者が炊き出し現場でもらった無料食品受け取り番号/右:生活福祉課からもらった東京都交通局の無料乗車券

滞納家賃を支払うため、食べるお金がない

彼によると、今までは新宿や隅田公園にある炊き出しに行っていて、上野公園に来るのは初めてだという。

彼は生活保護を受けて生活しており、毎月13万円を受け取っている。家賃を差し引くと、7万円が手に入るという。

私は彼に聞いた。

「毎月7万円の現金収入があれば食費として十分なのに、なぜわざわざ遠い所から数百円もの交通費をかけ、ここまで食べ物を取りに来るんですか?」
 
彼はこう答えた。

「数カ月前、住んでいたアパートから追い出されたときに、数十万円の未払い家賃がありました。私は家主に、収入があるときに必ず返す、と約束をしました。今は生活保護で受け取る7万円の大半をその返済として使っています。

そのため、毎月の食費が少なくなり、お腹を満たすためには炊き出しに頼るしかないんです。行政から東京都交通局の無料乗車券をもらったので、交通費の心配は要りません」

実は、生活保護費は、原則として個人の債務返済に使ってはいけない、と規定されている。このことは、彼もきっと知っているだろう。

しかし、彼のやっていることは仕方がないのかもしれない。できるだけ早く返済を済ませ、ルールを守ってもらいたい。

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