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パレスチナ情勢

「UNRWA(アンルワ)」とは何か?...イスラエルによる追放で新たな危機が始まる

Israel’s UNRWA Ban

2025年2月3日(月)15時05分
ジョン・ハルティワンガー、エイミー・マッキノン(いずれもフォーリン・ポリシー誌記者)

■今後はどうなる?

イスラエルはUNRWAに対し、占領下の東エルサレムにある全ての施設を明け渡し活動を停止するように命じた。ビザの取得や延長が困難になり、一部の外国人職員は退去を余儀なくされている。

ただし、具体的にどのような措置が取られるかについては不透明な部分が多い。

「東エルサレムを含む占領下のヨルダン川西岸地区では私たちの診療所は開いている。ガザでの人道的活動は継続中だ」と、UNRWAは1月29日にX(旧ツイッター)に投稿した。「私たちはとどまって支援を続けると約束する」


同日にイスラエルの最高裁は、活動禁止に異議を唱えたパレスチナの人権団体の申し立てを却下。「イスラエル国家の主権地域でのみUNRWAの活動を禁止する」もので、ガザやヨルダン川西岸地区では禁止していないと指摘した。

ただし、ガザへの支援物資の搬入にはイスラエル側との調整が必要で、新しい法律はUNRWAとイスラエル当局の接触を禁じている。UNRWAが物資を届けることは、これまでよりはるかに困難になりそうだ。

イスラエル外務省の報道官は、「国連機関、国際NGO、諸外国など、UNRWAの代わりとなる複数の組織が既にガザで人道支援活動を進めるために活動している」と述べている。

これに対し、その任務の範囲と、UNRWAが命を救う人道支援を日々提供し、ガザのパレスチナ人への医療と教育の主な提供者であることを考えれば、「国連のシステム内を含め、他の機関や組織がUNRWAの代替として機能できるというのは完全に間違っている」と、有力シンクタンク、国際危機グループの上級アナリスト、ダニエル・フォルティは言う。

「その空白を迅速かつ持続的に埋める組織があるとは、到底考えられない」

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