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カーター元米大統領の外交政策――低評価の2つの理由とその背景を検証

Carter Was a Foreign-Policy Visionary

2025年1月7日(火)16時34分
ジョナサン・オルター(元本誌コラムニスト)

カーターの外交政策にとって最大の挫折はイランだが、そもそも79年のイラン革命を彼が阻止できる可能性はほとんどなかった。景気後退と米民主党の分裂に加え、米大使館占拠事件で人質の解放を実現できなかったことが、大統領再選を絶望的にした。

2016年に私が伝記執筆のために行ったインタビューで彼は、イランを爆撃して強硬姿勢を見せていたら再選できたかもしれないが、戦闘で人質と数千のイラン人が死亡した可能性が高いと語った。


カーターはホワイトハウスの屋根に太陽光パネルを設置しただけでなく(レーガンが撤去した)、アメリカ初の包括的エネルギー法案と14の主要な環境法案に署名し、外国産石油への依存から脱却する道筋を描いた。2期目を迎えていたら、当時の科学者が「二酸化炭素汚染」と呼んでいた不明瞭な問題に対処する計画も立てていた。

これも彼の政治的な悲劇の1つだ。

カーターがアメリカを象徴する大統領の1人であることに異論はないだろう。しかし、彼の死を機に、「悪い大統領」や「偉大な元大統領」という安易な分類は終わりにしよう。

大統領を退いた後の無私無欲の姿勢や人道主義的な功績は称賛に値するが、在任中は世界を形作る上ではるかに大きな影響力を持っていた。正当に評価されていない高潔で先見の明のあるこの人物を、今こそ再評価する時だ。

(筆者は自書にカーターの伝記『ヒズ・ベリー・ベスト』がある)

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