最新記事
ロシア

真の敵は中国──帝政ロシアの過ちに学ばない愚かさ

2024年12月31日(火)16時45分
S・C・M・ペイン(米海軍大学校教授)

プーチンは繰り返し核の使用をちらつかせるが、これを実行すれば、ロシアは20世紀のナチスに代わり21世紀最大の嫌われ者になるだろう。

ロシア人は第三帝国時代のドイツ人と同じく侵略戦争を支持している。ソ連が輸出した経済モデルで多くの国が貧困に陥った後で隣国に核爆弾を落とせば、ロシアには「世界で最も歴史に逆行している国」、ロシア人には「世界で最も野蛮な国民」のレッテルが定着する。

こうした負の遺産は数十年たっても消えない。ドイツ人に聞けば分かるはずだ。

重要なのは、側近たちがプーチンとどこまでいくのかという点だ。最後まで支えるなら彼らはいずれ国家ともども中国に翻弄され、困窮するだろう。領土を奪われた遺恨を、中国が晴らそうとするのは間違いない。

戦争で誰が得をするのか、権力中枢の人間は考えたほうがいい。答えは無論、プーチン1人だ。可能なうちに損切りをして手を引くか、沈む船と運命を共にするか。彼らが迷っている間にもロシアは崩壊していく。

帝政ロシアの貴族と同じ末路をたどりたくないなら、側近は自分の資産を守るためにもプーチンに退陣を促し、ウクライナに領土を返還して国家的損害を食い止めるべきだ。

だがあいにくロシア人は国が大惨事に見舞われない限り、戦略を変える気にはならないらしい。

©Project Syndicate


S・C・M・ペインS・C・M・ペイン
S.C.M. PAINE
米海軍大学校で歴史学と国家戦略の教鞭を執る。『アジアの多重戦争1911-1949』(みすず書房)をはじめ著書多数。


ニューズウィーク日本版 世界が尊敬する日本のCEO
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年7月1日号(6月24日発売)は「世界が尊敬する日本のCEO」特集。不屈のIT投資家、観光ニッポンの牽引役、アパレルの覇者……その哲学と発想と行動力で輝く日本の経営者たち

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、貿易交渉期限「確定せず」 7月9日前倒

ワールド

暗号資産の犯罪防止へ規制強化呼びかけ、国際監視組織

ワールド

主要18カ国との貿易交渉、9月1日までに完了の見通

ワールド

トランプ氏、カナダとの貿易交渉を即時終了 デジタル
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本のCEO
特集:世界が尊敬する日本のCEO
2025年7月 1日号(6/24発売)

不屈のIT投資家、観光ニッポンの牽引役、アパレルの覇者......その哲学と発想と行動力で輝く日本の経営者たち

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門家が語る戦略爆撃機の「内側」と「実力」
  • 2
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急所」とは
  • 3
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で大爆発「沈みゆく姿」を捉えた映像が話題に
  • 4
    富裕層が「流出する国」、中国を抜いた1位は...「金…
  • 5
    韓国が「養子輸出大国だった」という不都合すぎる事…
  • 6
    夜道を「ニワトリが歩いている?」近付いて撮影して…
  • 7
    伊藤博文を暗殺した安重根が主人公の『ハルビン』は…
  • 8
    ロシア人にとっての「最大の敵国」、意外な1位は? …
  • 9
    定年後に「やらなくていいこと」5選──お金・人間関係…
  • 10
    【クイズ】北大で国内初確認か...世界で最も危険な植…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の「緊迫映像」
  • 3
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々と撤退へ
  • 4
    定年後に「やらなくていいこと」5選──お金・人間関係…
  • 5
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 6
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測…
  • 7
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 8
    飛行機内で「最悪の行為」をしている女性客...「あり…
  • 9
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 10
    サブリナ・カーペンター、扇情的な衣装で「男性に奉…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊の瞬間を捉えた「恐怖の映像」に広がる波紋
  • 4
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測…
  • 5
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 6
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 7
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 8
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 9
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 10
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中