最新記事
世界情勢

今、世界は現代版『ゲルニカ』だ!...「京都が体現する共存」から世界を見つめ直した

GUERNICA IS ALWAYS WITH US

2024年12月27日(金)14時25分
アニー・コーエンソラル(歴史学者)

それはおそらく、京都の精神領域が単一の思想に支配された世界ではなく、より穏やかで統合されたものだからだろう。仏教寺院の境内に美しい鳥居が並び、一対の小さな狐が見守っている。日本の宗教建築物の平和な折衷主義に敬意を表さずにいられない。

京都が体現する共存は、6世紀に中国や朝鮮半島から仏教が伝来して神道と融合した前後から築かれてきた。


もちろん、日本にも宗教的な暴力が蔓延した時代があった。寺社は焼き打ちに遭い、破壊され、仏像は川に投げ捨てられたり薪として使われたりした。

日本における信教の自由は1889年の大日本帝国憲法(明治憲法)以降、外国からの圧力も受けながら徐々に確立された。そのおかげで仏教と神道の平和的な共存が実現し、それぞれの要素が互いの慣習に組み込まれてきた。

私は2024年の新年の挨拶として、イタリア半島最東端のオトラント大聖堂で12世紀に描かれたモザイク画の写真に、深刻だが明るいメッセージを添えた。

「世界の果てで出合った中世のモザイク画が、この超激動の時代に私たちの願いをかなえてくれるだろう。息をのむほど素晴らしく、迷路のようで、神秘的な生命の樹と互いに殺し合う動物たち。2024年に幸あれ!」

1年がたち、もはや疑いの余地はない。24年は私たちに多くの幸福をもたらしはしなかった。政治家が迷走し、制度が沈黙し、ポピュリズムが猛威を振るうとき、先頭に立つのは個人だ。まさに1937年の『ゲルニカ』のように。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

アングル:雇用激減するメキシコ国境の町、トランプ関

ビジネス

米国株式市場=小幅安、景気先行き懸念が重し 利下げ

ビジネス

NY外為市場=ドル対主要通貨で下落、軟調な雇用統計

ワールド

米国防総省、「戦争省」に改名へ トランプ氏が大統領
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:豪ワーホリ残酷物語
特集:豪ワーホリ残酷物語
2025年9月 9日号(9/ 2発売)

円安の日本から「出稼ぎ」に行く時代──オーストラリアで搾取される若者たちの実態は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    眠らないと脳にゴミがたまる...「脳を守る」3つの習慣とは?
  • 2
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 3
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニングをする女性、異変を感じ、背後に「見えたモノ」にSNS震撼
  • 4
    「あのホラー映画が現実に...」カヤック中の男性に接…
  • 5
    「生きられない」と生後数日で手放された2本脚のダ…
  • 6
    【動画あり】9月初旬に複数の小惑星が地球に接近...…
  • 7
    「ディズニー映画そのまま...」まさかの動物の友情を…
  • 8
    「よく眠る人が長生き」は本当なのか?...「睡眠障害…
  • 9
    謎のセレブ中国人ヤン・ランランの正体は「天竜人」?
  • 10
    キリストを包んだとされる「聖骸布」はやはり偽物だ…
  • 1
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニングをする女性、異変を感じ、背後に「見えたモノ」にSNS震撼
  • 2
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体」をつくる4つの食事ポイント
  • 3
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動ける体」をつくる、エキセントリック運動【note限定公開記事】
  • 4
    【動画あり】9月初旬に複数の小惑星が地球に接近...…
  • 5
    眠らないと脳にゴミがたまる...「脳を守る」3つの習…
  • 6
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にす…
  • 7
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が…
  • 8
    「あのホラー映画が現実に...」カヤック中の男性に接…
  • 9
    「よく眠る人が長生き」は本当なのか?...「睡眠障害…
  • 10
    首を制する者が、筋トレを制す...見た目もパフォーマ…
  • 1
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 2
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 3
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ女性が目にした光景が「酷すぎる」とSNS震撼、大論争に
  • 4
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 5
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 6
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
  • 7
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
  • 8
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 9
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家の…
  • 10
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中