最新記事
ウクライナ情勢

ゼレンスキーのクルスク侵攻は「プーチンの思うつぼ」だったのか?...「時間が経つにつれて、損失は大きくなる」

Zelensky's Kursk incursion could be playing into Putin's hands

2024年9月2日(月)17時00分
ブレンダン・コール

クルスクの住民は、侵攻に対するロシア当局の対応に怒りを覚えているが、ロシア政府が支配するメディアは、この攻撃をウクライナが攻撃的な意図をいだいている証拠と決めつけている。

これは、プーチンのウクライナ侵攻をさらに正当化し、政府の対応に対する期待をコントロールし、政治指導者に対する支持が高まる旗下結集効果を生みだす可能性がある。


 

ロシアの戦略文化を再解釈する(Reinterpreting Russia's Strategic Culture: The Russian Way of War)』の著者でボローニャ大学の研究員ニコロ・ファソラは、ウクライナの侵攻はすでにプーチンに一定の利益をもたらしていると言う。

ウクライナによるロシアの領土獲得が戦争の流れを変えることは「ありそうもない」し、ロシアがポクロフスクへの進撃を継続することは、国内の関心をクルスクからそらし、ドンバス地方の作戦に関するロシア政府の言い分を補強する可能性がある。

ファソラは、クルスク侵攻によって新たな戦場が生まれたかもしれないが、ゼレンスキーが最も有能な部隊の一部をそちらに向けたことは、戦線の過剰拡大の危険をはらんでいると考えている。

「ウクライナはクルスクに限られた予備兵力を投入し、さまざまな部隊を作戦参加のために戦線から離脱させるという賭けに出た」と、保守系シンクタンク民主主義防衛財団(FDD)のロシアプログラムのジョン・ハーディ副所長は語った。「この作戦が成功したかどうかは、時が経てばわかるだろう」。

これまでのところ、クルスクでのウクライナ軍の装備の損失はそれほど大きくないが、「時間が経つにつれて、損失は大きくなるだろう」と、ハーディは言う。

「ウクライナにとってのリスクは、地域の安定化のために部隊が必要となり、他の地域を防衛するために利用できないということだけではない。部隊は消耗する可能性があり、兵員の不足の問題が悪化しかねない」

ウクライナ政府は明言していないが、今回の越境侵攻の目的は、ロシア領内に緩衝地帯を作ることと同様に、和平交渉における潜在的な影響力に関連しているようだ。

ニューズウィーク日本版 高市早苗研究
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年11月4日/11日号(10月28日発売)は「高市早苗研究」特集。課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら



あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ステファニク下院議員、NY州知事選出馬を表明 トラ

ビジネス

米ミシガン大消費者信頼感、11月速報値は約3年半ぶ

ワールド

イラン大統領「平和望むが屈辱は受け入れず」、核・ミ

ワールド

米雇用統計、異例の2カ月連続公表見送り 10月分は
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 2
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2人の若者...最悪の勘違いと、残酷すぎた結末
  • 3
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統領にキスを迫る男性を捉えた「衝撃映像」に広がる波紋
  • 4
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    なぜユダヤ系住民の約半数まで、マムダニ氏を支持し…
  • 7
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 8
    長時間フライトでこれは地獄...前に座る女性の「あり…
  • 9
    【銘柄】元・東芝のキオクシアHD...生成AIで急上昇し…
  • 10
    「これは困るよ...」結婚式当日にフォトグラファーの…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 5
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 6
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 7
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 8
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 9
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 10
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中