最新記事
安全保障

石破新総裁「安保のエキスパート」自任...日米同盟を「米英並みに」

2024年9月27日(金)20時05分
石破茂

5回目の挑戦で悲願を達成して自民党新総裁に就任する石破茂氏は、安全保障政策のエキスパートを自任する。日米同盟を米英と同等に引き上げ、日本をより自立した「普通の国」に変えると主張する。都内で27日撮影(2024年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)

5回目の挑戦で悲願を達成して自民党新総裁に就任する石破茂氏は、安全保障政策のエキスパートを自任する。日米同盟を米英と同等に引き上げ、日本をより自立した「普通の国」に変えると主張する。

「米英同盟並みに日米同盟を引き上げることが私の使命」──。石破氏は今月23日、米ハドソン研究所の求めに応じて提出した自身の外交政策にこう盛り込み、日米安全保障条約を「非対称双務条約」から対等な条約に変えることを目指すと主張した。


 

日米安保条約の下、日本は米軍に基地を提供する義務を、米国は日本を防衛する義務を負う。しかし、今月6日にロイターのインタビューに応じた石破氏は、北朝鮮が米国本土に届く弾道ミサイルを保有したことが「劇的な変化だと思っている」と語った。

核弾頭を積んだ大陸間弾道ミサイル(ICBM)が北朝鮮から米国本土に飛来するリスクが出てきたことで、米国は日本を守るための核使用を躊躇(ちゅうちょ)する可能性がある、との見方だ。石破氏はハドソンに提出した外交政策書で、「これに中国の戦略核が加われば、米国の当該地域への拡大抑止は機能しなくなっている」との認識を示した。

石破氏は小泉純一郎内閣で防衛庁長官、福田康夫内閣で防衛相を歴任し、有事法制の制定や米軍基地の再編などに取り組んだ。「日米同盟とは何か、これからどう変わっていくべきか。私が防衛庁長官の時からずっと米国と議論してきた」とロイターのインタビューで話した。

米戦略国際問題研究所(CSIS)の日本部上席研究員でアジア担当副部長のニコラス・セーチェーニ氏は、「石破氏は争点となる課題について限界に挑もうとするのかもしれない」とみる。

その一つが、在日米軍の法的地位を定める日米地位協定の改定だ。日本の法律が適用されないなど特別な地位を在日米軍に与えており、特に基地が集中する沖縄県には負担となってきた。

石破氏は、自衛隊を米国に駐留させることで両国の地位協定を同レベルにすることをハドソンに送った政策書で提言している。また、安全保障を米国だけに依存しない「アジア版NATO(北大西洋条約機構)」を創設する構想も提示している。

安全保障で自立を目指す姿は、1959年から69年までフランスを率いたシャルル・ド・ゴール大統領と重なる。石破氏をよく知る関係者によると、自身もド・ゴール氏に言及することがあるという。一方で、米国とともに第2次世界大戦を戦った英国のウィントン・チャーチル首相も話題になるという。



[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2024トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

ニューズウィーク日本版 ガザの叫びを聞け
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年12月2日号(11月26日発売)は「ガザの叫びを聞け」特集。「天井なき監獄」を生きる若者たちがつづった10年の記録[PLUS]強硬中国のトリセツ

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ウ大統領府長官の辞任、深刻な政治危機を反映=クレム

ワールド

トランプ氏、ベネズエラ大統領と電話会談 米での会談

ワールド

ネクスペリアに離脱の動きと非難、中国の親会社 供給

ビジネス

米国株式市場=5営業日続伸、感謝祭明けで薄商い イ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 2
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 3
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場の全貌を米企業が「宇宙から」明らかに
  • 4
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 5
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 6
    「攻めの一着すぎ?」 国歌パフォーマンスの「強めコ…
  • 7
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 8
    子どもより高齢者を優遇する政府...世代間格差は5倍…
  • 9
    エプスタイン事件をどうしても隠蔽したいトランプを…
  • 10
    メーガン妃の「お尻」に手を伸ばすヘンリー王子、注…
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 3
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネディの孫」の出馬にSNS熱狂、「顔以外も完璧」との声
  • 4
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 5
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 6
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 7
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後…
  • 8
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 9
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 10
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中