最新記事
中東

ヒズボラが大規模報復攻撃、イスラエルは先制 紛争拡大に懸念

2024年8月26日(月)11時00分
レバノン側の火の手

ヒズボラは25日、イスラエルによる最高幹部殺害の報復として、同国に対し数百発のロケット弾と無人機を発射した。写真は国境のレバノン側で上がる火の手。(2024年 ロイター/Aziz Taher)

レバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラは25日、イスラエルによる最高幹部殺害の報復として、同国に対し数百発のロケット弾と無人機(ドローン)を発射した。イスラエル軍はヒズボラが大規模攻撃を準備していることを事前に察知し、約100機の戦闘機でレバノンの標的を攻撃したと発表した。

過去10か月以上にわたる双方の交戦で最大規模の衝突の一つとなった。

レバノンで3人、イスラエルで1人の死亡が確認された。双方ともさらなる緊張激化を避けたい考えを示唆する一方、追加攻撃の可能性も警告した。

ヒズボラは320発以上の「カチューシャロケット」を発射し、11カ所の軍事目標を攻撃したと明らかにした。これにより報復の「第一段階」が完了したが、完全な対応には「しばらく時間がかかる」とした。

ヒズボラの指導者ナスララ師は攻撃が「計画通り」に完了したとしながら、攻撃の影響を評価した上で「結果が不十分なら別の機会に対応する権利を留保する」と述べた。

イスラエルのカッツ外相は、イスラエルは地上での情勢変化に応じるが、全面戦争は求めていないと述べた。一方、ネタニヤフ首相は「物語はこれで終わりではない」と警告。また、「先制」攻撃によってより大規模な攻撃を阻止したと強調した。

ヒズボラのシュクル司令官は先月、ベイルート郊外でイスラエルの空爆により殺害され、両者の間で緊張が高まっていた。

関係者によると、ヒズボラはパレスチナ自治区ガザの停戦協議に時間を与えるため報復を遅らせ、全面戦争を回避するため攻撃を調整したという。

ナスララ師はヒズボラの攻撃について、テルアビブ周辺の情報機関拠点に集中させたと説明。ネタニヤフ氏はイスラエル中部の戦略的拠点を狙った無人機は全て迎撃したと述べた。

ヒズボラはイスラエルの攻撃で戦闘員2人が死亡したと発表。ヒズボラに近いシーア派グループのアマルも戦闘員1人が死亡したと明らかにした。

イスラエル軍は海軍の兵士1人が死亡、2人が負傷したとしている。

テルアビブの空港を発着する便は約90分にわたって中断された。レバノンのベイルート発着便も一部が中断された。

<地域紛争への懸念>

イスラエルとヒズボラの緊張が高まったことで、米国とイランを巻き込むより広範な地域紛争が起こるのではないかとの懸念が高まっている。

米ホワイトハウスはバイデン大統領が状況を注視していると述べた。米国家安全保障会議(NSC)のサベット報道官は「(バイデン氏の)指示により、政府高官はイスラエル側と継続的に連絡を取っている。われわれはイスラエルの自衛権を支持し、地域の安定のために努力し続ける」と説明した。

米当局者によると、米政府はイスラエルによる今回の攻撃に関与していないが、ヒズボラの攻撃準備について情報を提供したという。

国連のグテレス事務総長は緊張激化を「深く懸念」していると表明し、イスラエルとヒズボラ双方に直ちに敵対行為を停止するよう求めた。



[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2024トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

ニューズウィーク日本版 日本時代劇の挑戦
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年12月9日号(12月2日発売)は「日本時代劇の挑戦」特集。『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』 ……世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』/岡田准一 ロングインタビュー

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

百貨店11月売上高、日中悪化の影響限定的 「協調精

ワールド

旧統一教会の韓鶴子総裁、初公判で起訴内容否認 「政

ワールド

韓国特別検察、ソウル市長を在宅起訴 政治資金法違反

ビジネス

中国の輸出規制強化、欧州企業3割が調達先変更を検討
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業界を様変わりさせたのは生成AIブームの大波
  • 2
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 3
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 4
    メーガン妃の写真が「ダイアナ妃のコスプレ」だと批…
  • 5
    「世界で最も平等な国」ノルウェーを支える「富裕税…
  • 6
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 7
    コンセントが足りない!...パナソニックが「四隅配置…
  • 8
    「世界一幸せな国」フィンランドの今...ノキアの携帯…
  • 9
    中国の「かんしゃく外交」に日本は屈するな──冷静に…
  • 10
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 3
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 4
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 5
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体…
  • 6
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 7
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 8
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後…
  • 9
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 10
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中