最新記事
米社会

ホームレス激増のアメリカ...原因は、コロナ禍の仮釈放、バス移動、過熱したIT経済とバラバラ?

2024年8月14日(水)13時34分
冷泉彰彦(在米作家、ジャーナリスト)
ニューヨークのホームレス

ホームレス急増で治安悪化の懸念が(ニューヨーク) SHANNON STAPLETONーREUTERS

<米大統領選を左右するほどの大問題になっているホームレスの増加だが、東海岸と西海岸でその原因は全く異なっている>

アメリカはコロナ禍後の治安悪化に苦しんでいるが、なかでもホームレスの増加は大統領選を左右するほどの政治課題になっている。特に深刻なのが東海岸のニューヨークと、西海岸のロサンゼルス、サンフランシスコだが、その原因は地域によって違いがある。

ニューヨークの場合は、コロナ禍中に刑務所でクラスターが発生し、多くの受刑者が仮釈放されてホームレス化した。冬の寒さをしのぐために地下鉄の構内や車内に寝泊まりする者が多く、地下鉄の治安が極端に悪化。その対策には州兵まで駆り出されるほどだ。

また、南部諸州から大量に送り込まれる難民申請者をシェルターに入居させたため、もとから管理を嫌がっていた昔からのシェルター入居者がこれを機に路上に逃げ出したりもした。

それとは全く異なるのが西海岸のホームレス事情だ。まず、テキサス州など保守的な自治体が治安優先でホームレスを追放し、バスに乗せて、人権意識が高いとされるカリフォルニア州に勝手に移動させた。

これに加えて、西海岸ではIT経済が過熱したために不動産が高騰。仕事はあっても家賃を払えない人が急増した。仮設住宅から役所や企業に通勤するという「定職のあるホームレス」も出現している。

ニューズウィーク日本版 Newsweek Exclusive 昭和100年
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年8月12日/19日号(8月5日発売)は「Newsweek Exclusive 昭和100年」特集。現代日本に息づく戦争と復興と繁栄の時代を、ニューズウィークはこう伝えた

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

インド政府が大型間接減税発表、米と貿易対立続くモデ

ワールド

中国新華社、半導体に追跡装置装着で米を「監視帝国」

ビジネス

テスラ車の英リース料金、最大40%値引き=英紙

ビジネス

クシュナー氏のPE、英金融会社オークノース株8%取
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
2025年8月12日/2025年8月19日号(8/ 5発売)

現代日本に息づく戦争と復興と繁栄の時代を、ニューズウィークはこう伝えた

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コロラド州で報告相次ぐ...衝撃的な写真の正体
  • 2
    【クイズ】次のうち、「海軍の規模」で世界トップ5に入る国はどこ?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
  • 5
    AIはもう「限界」なのか?――巨額投資の8割が失敗する…
  • 6
    恐怖体験...飛行機内で隣の客から「ハラスメント」を…
  • 7
    「イラつく」「飛び降りたくなる」遅延する飛行機、…
  • 8
    40代は資格より自分のスキルを「リストラ」せよ――年…
  • 9
    「パイロットとCAが...」暴露動画が示した「機内での…
  • 10
    「長女の苦しみ」は大人になってからも...心理学者が…
  • 1
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 2
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...「就学前後」に気を付けるべきポイント
  • 3
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コロラド州で報告相次ぐ...衝撃的な写真の正体
  • 4
    「笑い声が止まらん...」証明写真でエイリアン化して…
  • 5
    「長女の苦しみ」は大人になってからも...心理学者が…
  • 6
    「何これ...」歯医者のX線写真で「鼻」に写り込んだ…
  • 7
    【クイズ】次のうち、「海軍の規模」で世界トップ5に…
  • 8
    債務者救済かモラルハザードか 韓国50兆ウォン債務…
  • 9
    「触ったらどうなるか...」列車をストップさせ、乗客…
  • 10
    産油国イラクで、農家が太陽光発電パネルを続々導入…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 7
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 8
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
  • 9
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
  • 10
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中