最新記事
能登半島地震

能登半島地震から半年、メディアが伝えない被災者たちの悲痛な本音と非情な現実

REFLECTING THE FUTURE

2024年7月1日(月)10時40分
小暮聡子(本誌記者)

newsweekjp_20240701014115.jpg

輪島市役所に貼られた注意書き KOSUKE OKAHARA FOR NEWSWEEK JAPAN


 

仮設住宅の非情な現実

やっと故郷に戻れるというのに、「住めない」仮設とは一体どんな場所にあるのか。車で向かうと、二井の言う輪島市杉平町「サンアリーナ駐車場」の仮設住宅に行くには、亀裂の入った急勾配の坂道を上らねばならず、反対車線は陥没していた。高齢者がこの坂道を歩いて行き来するのは体力的に難しく、車がなければ買い物に出かけるのもままならないだろう。

駐車場に軽自動車を止める高齢男性2人がいたので、プレハブ式仮設の中を見せてもらう。4畳半ほどの部屋が1つ。小さなキッチンとトイレと浴室、それに電化製品が一式そろってはいるが、91歳と81歳の兄弟2人が生活するにはあまりに狭い。

前日に、辻田政俊が口にしていた「弱者に配慮のない割り振り」「知らない部落の仮設に入ったら、それこそ孤独死や」という言葉が思い出される。

仮設住宅には、一般的に音漏れがしやすいといわれるプレハブ式と、2年を過ぎても災害公営住宅に転用し居住可能な黒い屋根瓦付きの木造長屋型がある。2つのどちらに当たるかも、住民の間で不公平感が募る一因になっている。

しかし、市としてはプレハブ式と木造長屋型を等しく応急仮設住宅として扱っており、入居募集のときにどちらを希望するかも聞いていないと、輪島市まちづくり推進課の上畠茂雄課長は説明する。

どちらに割り振られるかは、「元の住居に近いかどうか」が一つの基準。そのほか、「全壊など被災の程度、高齢者のみ、要支援者など、細かくは言えないんですけど、いろんな基準を設けて点数を付けて選考している」。

車を持っているかどうかは入居募集の際に確認しておらず、山の上であっても「無料巡回バスは走らせているし、住めないということはない」。木造長屋型も入居期間は2年で、「住宅の造りとして」2年を超えても住めるというだけで、その後の活用方法は決まっていないという。

上畠によれば、「応急仮設住宅の当初の目的は、少しでも早く避難所生活を解消すること」だ。住民一人一人の事情に応じて、その全てに配慮しようとすれば「収拾がつかなくなる」と言う。市役所にかかってくる電話を受ければ30分、窓口では「座ったら1時間」という対応を、職員は毎日やっている。

市職員も程度の差こそあれ、ほぼ全員が被災しており、休み返上で働き続けてきた彼らの負担も想像に難くない。まちづくり推進課のドアに貼られた紙には、「入居要件に関して執拗な要求が続くと不当要求行為とみなし警察へ通報する場合があります」と赤い文字で書かれていた。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

不測の事態に備え暫定予算を編成する方向で検討したい

ビジネス

テスラ、インドでエネルギー貯蔵事業に参入へ 現地財

ワールド

EXCLUSIVE-カタール、自国LNG施設へのイ

ビジネス

ピンタレストCEO、世界の指導者に16歳未満のSN
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:イラン革命防衛隊
特集:イラン革命防衛隊
2026年3月24日号(3/17発売)

イスラム神権国家を裏からコントロールする謎の軍隊の歴史と知られざる実力

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【銘柄】「三菱商事」の株価に高まる期待...ホルムズ海峡封鎖と資源価格高騰が業績を押し上げ
  • 2
    「カメラの目の前」で起きた爆発の瞬間...取材中の記者に、イスラエル機がミサイル発射(レバノン)
  • 3
    レストラン店内で配膳ロボットが「制御不能」に...店員も「なすすべなし」の暴走モード
  • 4
    スウェーデン次期女王ヴィクトリア皇太子、陸軍訓練…
  • 5
    韓国製ミサイル天弓-II、イラン戦争で96%迎撃の衝撃 …
  • 6
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 7
    「胸元を強調しすぎ...」 米セレブ、「目のやり場に…
  • 8
    人気セレブの「問題ビデオ」拡散を受け、出演する米…
  • 9
    「筋力の正体」は筋肉ではない...ストロングマンが語…
  • 10
    BTSカムバック公演で光化門に26万人、ソウル中心部の…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期スペイン女王は空軍で訓練中、問われる「軍を知る君主」
  • 3
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え時の装いが話題――「ファッション外交」に注目
  • 4
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 5
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公…
  • 6
    第6回大会を終えて曲がり角に来たWBC
  • 7
    【衛星画像】イラン情勢緊迫、米強襲揚陸艦「トリポ…
  • 8
    韓国製ミサイル天弓-II、イラン戦争で96%迎撃の衝撃 …
  • 9
    「マツダ・日産・スバル」が大ピンチ?...オーストラ…
  • 10
    【銘柄】「三菱商事」の株価に高まる期待...ホルムズ…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 6
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 7
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 8
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 9
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 10
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中