最新記事
韓国

「韓国は詐欺大国」の事情とは

2024年5月20日(月)17時30分
佐々木和義

韓国で最も多い犯罪は詐欺 (写真はイメージ)Tanawat Chantradilokrat-Shutterstock

<22年に実施された国際調査で「ほとんどの人は信用できる」と回答した韓国人は世界平均の30%を下回る23%だった。国や警察と詐欺師のいたちごっこが終わることはない......>

韓国国土交通部は24年3月27日と4月17日、伝貰(チョンセ)詐欺被害支援特別法にもとづく委員会を開催し、1432件を被害認定した。被害認定数は23年6月1日の同法施行以来、累計で1万5433件となった。認定を受けた被害者は居住する住宅の優先買取り権を与えられ、土地住宅公社(LH)が被害者に代わって当該住宅を買収して、公共住宅として被害者に賃貸するというもので、被害者は最長20年、居住が保障される。

チョンセは韓国特有の不動産賃貸方式で、月々の家賃はなく、入居時に売買価額の50%から80%を保証金として預け入れる。家主は保証金を運用して退去時に返還する。運用益が事実上の家賃だが、保証金を返さない詐欺が増えている。

韓国特有の不動産賃貸方式「チョンセ」のトラブル

韓国の不動産賃貸は2年契約が一般的で、入居者が契約期間の途中で退去する場合、家主は新たな入居者と契約するか契約期間満了まで保証金の返還が猶予される。少なくとも2年間は返さなくて良いことから投機に手を出す家主がいる。

入居者から預かった保証金を元手に他の不動産を購入し、チョンセで貸して預かった保証金でさらに他の不動産を購入するといった行為を繰り返す投機に加え、売買価格と保証金の差額のみの売買も増えている。たとえば売買価格10億ウォンのマンションに賃借人が8億ウォンのチョンセで入居している場合、差額の2億ウォンだけで売買するのだ。

賃貸契約満了時、家主は当該不動産を担保に借金をして保証金を返すが、担保価額が下落して借入金が保証金を下回るなどで返さないケースが増えている。

韓国で最も多い犯罪は詐欺

韓国で最も多い犯罪は詐欺である。世界的には窃盗が最多で、日本も検察庁が2022年に認知した最も多い犯罪は窃盗の46.8%だった。韓国は詐欺が全犯罪の30%を占めている。20年の詐欺件数は335万4154件で15歳以上の韓国人13人に1人の計算だ。

詐欺が多い背景の一つが国民性だ。高校生を対象に行った調査で「犯罪の代価として10億ウォンを得られるなら1年間刑務所に送られても良いか」という質問に55%が「構わない」と回答したが、17世紀の朝鮮も「詐欺王国」として日本や欧州に知られていた。

1653年、長崎の出島に向かっていたオランダの交易船が済州島に漂着した。13年間、幽閉されたオランダ東インド会社のヘンドリック・ハメルは脱出して五島列島に漂着、長崎奉行所から出島のオランダ商館に引き渡されて帰国したが、経験を綴った『朝鮮幽囚記』に「朝鮮人は嘘をついたり、騙したりすることを手柄と考え恥辱とは考えていない」と記している。

裁判も詐欺の横行に拍車をかける。筆者が知る弁護士は、請求額が2000万ウォン以下の少額訴訟は手続きが簡便で費用も安価なことから訴訟を起こす被害者が多く、手が回らない裁判所が十分な精査を行わずに判決を下すケースが少なくないと話す。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

伊プラダ第1四半期売上高は予想超え、ミュウミュウ部

ワールド

ロシア、貿易戦争想定の経済予測を初公表 25年成長

ビジネス

テスラ取締役会がマスクCEOの後継者探し着手、現状

ワールド

米下院特別委、ロ軍への中国人兵参加問題で国務省に説
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 2
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 6
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 9
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 10
    中居正広事件は「ポジティブ」な空気が生んだ...誰も…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 7
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 8
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 9
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 10
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中