最新記事
インタビュー

単独取材:岸田首相、本誌に語ったGDP「4位転落」日本経済の現実...物価対策、移民政策への考えとは?

COMPLEX CHALLENGES AHEAD

2024年5月4日(土)20時51分
構成:トム・オコナー

──防衛と外交、双方のニーズのバランスを取るのは難しい。特にアジアでは、日本の安全保障能力の強化に懸念を示す国もある。

先ほど申し上げたように、国家安全保障戦略が新たに策定されたが、平和を愛する国としてのわが国の針路は変わらない。専守防衛に徹し、非核三原則を堅持する。この基本方針は不変だ。その点は新たな戦略でも明確に示している。

この戦略に従った上で、日本にとって好ましい国際環境を、外交を通じて実現しなければならない。その取り組みにおいて最も重要な基本原則とは、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の実現だ。

武力によって現状を変えようとする試みは、世界のどこであれ、許されない。さらに、こうしたルールや国際法は、脆弱な国々を保護するために存在すると私は考えている。そのため、わが国は東南アジアやグローバルサウスを含む多くの国々に対して、国際的なルールに従った秩序を維持していくことの重要性を強く訴えている。

こうしたわが国の立場は、多くの国から支持を集めている。私たちは、法の支配に基づく国際秩序を維持するべきであり、国際社会において、対立や分断ではなく、協調を生み出すべきだ。これが、真っ先に打ち出すべき重要なメッセージだと私は考えている。

──日本は安全保障の分野で今までより大きな役割を果たそうとしているわけだが、アジアにはそれを受け入れる準備があると思うか。

あると思う。わが国はこの地域の平和と安定、そして自由で開かれたインド太平洋の実現に向けて最善を尽くしている。しかしながら、この点については、いかなる誤解もあってはならない。わが国は、こうした目標を軍事力によって実現したいと言っているわけではない。平和国家である日本が望んでいるのは、経済やさまざまなインフラ支援策、さらに文化やスポーツといったソフトパワーの活用を通じた実現だ。

平和国家としての路線は変わらないと申し上げた。それに加えて、わが国には平和憲法がある。この憲法、そして国際法や国内の法規に基づいて外交および安全保障に取り組んでいく。また、この基本姿勢を地域諸国に説明することも重要だ。私自身は、この姿勢はアジア諸国の理解を得ていると考えている。

──日本の政府関係者が安全保障上の脅威としてよく挙げるのは、高度なミサイルシステムの実験を続けている北朝鮮だ。経済制裁は効いていないようだが、あの国に対処するには何がベストだと思うか?

北朝鮮の核・ミサイル開発は、日本のみならず、国際社会の平和と安全保障にとって脅威だ。北朝鮮の非核化を求める国連安保理決議の完全な履行が必要だと思う。

この件に関しては、3月28日に北朝鮮に対する制裁状況の実施体制について調査する専門家パネルの任期を延長する決議案が安保理に提出されたが、ロシアの拒否権行使で否決された。これは極めて遺憾だ。

日本としては、当該の安保理決議の完全履行に向け、アメリカや韓国、そして志を同じくする国々と、これまで以上に緊密に連携しながら、さらなる働きかけを検討していく。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

訂正中国が北京で軍事パレード、ロ朝首脳が出席 過去

ワールド

米制裁下のロシア北極圏LNG事業、生産能力に問題

ワールド

豪GDP、第2四半期は前年比+1.8%に加速 約2

ビジネス

午前の日経平均は反落、連休明けの米株安引き継ぐ 円
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:豪ワーホリ残酷物語
特集:豪ワーホリ残酷物語
2025年9月 9日号(9/ 2発売)

円安の日本から「出稼ぎ」に行く時代──オーストラリアで搾取される若者たちの実態は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニングをする女性、異変を感じ、背後に「見えたモノ」にSNS震撼
  • 2
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体」をつくる4つの食事ポイント
  • 3
    「見せびらかし...」ベッカム長男夫妻、家族とのヨットバカンスに不参加も「価格5倍」の豪華ヨットで2日後同じ寄港地に
  • 4
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が…
  • 5
    上から下まで何も隠さず、全身「横から丸見え」...シ…
  • 6
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動…
  • 7
    トレーニング継続率は7倍に...運動を「サボりたい」…
  • 8
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害…
  • 9
    Z世代の幸福度は、実はとても低い...国際研究が彼ら…
  • 10
    「人類初のパンデミック」の謎がついに解明...1500年…
  • 1
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が下がった「意外な理由」
  • 2
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動ける体」をつくる、エキセントリック運動【note限定公開記事】
  • 3
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ女性が目にした光景が「酷すぎる」とSNS震撼、大論争に
  • 4
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体…
  • 5
    25年以内に「がん」を上回る死因に...「スーパーバグ…
  • 6
    豊かさに溺れ、非生産的で野心のない国へ...「世界が…
  • 7
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害…
  • 8
    首を制する者が、筋トレを制す...見た目もパフォーマ…
  • 9
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
  • 10
    上から下まで何も隠さず、全身「横から丸見え」...シ…
  • 1
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 2
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 3
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大ベビー」の姿にSNS震撼「ほぼ幼児では?」
  • 4
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 5
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 6
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 7
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 8
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 9
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 10
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中