「核実験場の風下には人が住んでいた」アカデミー賞『オッペンハイマー』が描かなかった被曝の真実
A GLARING OMMISSION
『オッペンハイマー』は歴史の半分しか語っていないが、ニューメキシコで起きた話を大々的に取り上げてくれた。おかげでトリニティやロスアラモスの人々が、自分たちの物語を語るチャンスができた。
「ひどい映画だ、自分は見ない、と地元の人たちは言うかもしれない」とゴメスは言った。「でも私は違う。これはすごい、きっとみんなが『トリニティ』や『ニューメキシコのマンハッタン計画』という単語で検索し始める。楽しみだわ」
それでもウィーラーには別な心配がある。ハリウッド映画の罠に、みんながはまってしまうことだ。「キリアン・マーフィー演じるオッペンハイマーの顔に浮かぶ苦悶の表情を見れば、彼が後悔の念に押しつぶされそうになっていることが分かる」と彼は言う。
「でも、そこが問題だ。一人の人間に罪を背負わせることで、他の人間は罪悪感から逃れられる。それでいいのか。アメリカという国は一貫して、マージナル(周縁的)なコミュニティーを無視し、差別し、破壊し続けてきた。科学の、あるいは経済の進歩のためと称して」
ウィーラーは続けた。「アメリカという国を偉大にした数あるプロジェクトのほとんどで、マージナルなコミュニティーが破壊されてきた。マンハッタン計画もトリニティの核実験も、その延長線上にある」