最新記事
ウクライナ戦争

ロシアが遂に使った(らしい)マッハ9の迎撃不能ミサイル「ツィルコン」の脅威

How Russia's Zircon Hypersonic Missiles Will Impact Ukraine War

2024年2月15日(木)17時08分
エリー・クック

ロシアは開発を始めたときから一貫してツィルコンの威力を喧伝してきた。それによれば、最高速度はマッハ9。マッハ1は時速約1225キロだから、その9倍の時速1万1000キロを超えるスピードで飛べることになり、迎撃は不可能だという。

ツィルコンは元々、極超音速の対艦ミサイルとして開発され、ロシアは2020年からフリゲート艦や潜水艦からの発射実験を行っていたと、米シンクタンク・ランド研究所の欧州支部の防衛安全保障アナリスト、マティアス・エケンは本誌に語った。

 
 

「ロシアはこのミサイルの運用を急いでいたので、早くも実戦配備し、使用した可能性があると聞いても、それほど驚かない」

しかしウクライナで初使用された可能性を過大評価すべきではないと、エケンは釘を刺す。「ロシアが国産の兵器システムを誇大宣伝するのは毎度のことだからだ」

ウクライナ側の発表によれば、ロシアが「無敵」と呼ぶもう1つの極超音速ミサイル「キンジャール」は、これまで何度もウクライナ軍に撃ち落とされた。

ウクライナの防空網は持つか

「ツィルコンが配備されれば、われわれは敵のあらゆる防衛システムを突破できると胸を張って言える」と、このミサイルを製造する戦術ミサイル公社の総帥であるボリス・オブノソフは今年1月ロシアの国営メディアに語った。だが西側の専門家はこの手の主張には懐疑的だ。

とはいえ、ウクライナ側が言うように、キンジャールはパトリオットで迎撃できたとしても、ツィルコンが実戦配備されれば、ウクライナの防空網を揺さぶる深刻な脅威になり得ると、英政府が14日に警告を発した。

今回ツィルコンが使用された可能性については、いくつか不明な点がある。黒海艦隊には今のところこのミサイルを搭載した船はほとんどないとみられているため、ロシア軍の支配地域の沿岸部から地上発射された可能性が高いと、英国防省はみている。地上発射型も開発されている模様だと、エケンも述べていた。

ロシアのアドミラル・ゴルシコフ級フリゲート艦の1号艦は既にツィルコンを搭載している。ロシアはこの艦を「大西洋、インド洋、さらには地中海を横断する長距離航海」に派遣したと、ロシアのセルゲイ・ショイグ国防相は1月初め国営メディアに述べた。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

英中銀が金利据え置き、量的引き締めペース縮小 長期

ワールド

台湾中銀、政策金利据え置き 成長予想引き上げも関税

ワールド

UAE、イスラエルがヨルダン川西岸併合なら外交関係

ワールド

シリア担当の米外交官が突然解任、クルド系武装組織巡
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、日本では定番商品「天国のようなアレ」を販売へ
  • 2
    中国は「アメリカなしでも繁栄できる」と豪語するが...最新経済統計が示す、中国の「虚勢」の実態
  • 3
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍、夜間に大規模ドローン攻撃 国境から約1300キロ
  • 4
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ…
  • 5
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 6
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 7
    【クイズ】世界で最も「リラックスできる都市」が発…
  • 8
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 9
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 10
    中国経済をむしばむ「内巻」現象とは?
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサイルが命中、米政府「機密扱い」の衝撃映像が公開に
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 6
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「なんて無駄」「空飛ぶ宮殿...」パリス・ヒルトン、…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中