最新記事
航空機

羽田でのJAL機衝突炎上事故に世界の航空業界が注目、その理由は?

2024年1月5日(金)15時35分
ロイター
羽田空港で炎上する日本航空の旅客機エアバスA350

日本航空の旅客機、エアバスA350が羽田空港着陸直後に海上保安庁の航空機と衝突して炎上した事故は、炭素繊維(カーボンファイバー)で強化した複合材を使った新世代旅客機の大火災時の安全性を検証する初めての機会になろうとしている。写真は炎上する日本航空機。羽田空港で2日撮影(2024年 ロイター/Issei Kato)

日本航空の旅客機、エアバスA350が羽田空港着陸直後に海上保安庁の航空機と衝突して炎上した事故は、炭素繊維(カーボンファイバー)で強化した複合材を使った新世代旅客機の大火災時の安全性を検証する初めての機会になろうとしている。

事故現場の写真を見ると、A350の機体は燃え尽きて灰になったことが分かる。運輸安全委員会や警視庁などは事故原因の究明を進めているが、航空業界が熱心に確かめようとしているのは炭素繊維強化複合材の耐久性だ。

エンブリーリドル航空大学の航空安全問題専門家、アンソニー・ブリックハウス氏は、今回の事故は火災だけでなく、衝突時の生存可能性という観点でも炭素繊維強化複合材にとって、初のケーススタディと言える、と述べた。

2000年代初めにボーイングが787ドリームライナー、エアバスがA350をそれぞれ投入した際に大いに期待したのは、軽量の炭素繊維強化複合材を使ったこれらの旅客機が燃費を大幅に節約し、機体を劣化させにくくして保守点検の負担が少なくなるという点だった。

ドリームライナーは就航直後、バッテリーの不具合による火災の問題で2013年初めに一時運航停止となったほか、13年7月にはエチオピア航空の機体で救命無線機のショートによる火災が発生し、改修を迫られた。

ただ、これらの火災では、機体の外殻が崩れ去ったわけではない。

A350は、胴体や尾翼と主翼の大部分など全体の53%に炭素繊維強化複合材が使われている。

複数の専門家は、機体構造が維持されていた間に、乗員乗客全員が安全に脱出したという事実は、特別な条件付きで認証されたこの複合材に対する信頼を新たにすることになると話す。

とはいえ現時点ではまだ、A350の外殻がどのように火災から一定時間持ちこたえたのか、あるいはどんな技術的教訓が得られるか、全面的な結論を導き出すのは時期尚早だとくぎを刺した。

SDGs
「ステハジ」が描く脱プラ未来...マイボトルでギネス記録、給水が新たな選択肢に
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

イエレン米財務長官、次期政権の金融監視態勢後退をけ

ビジネス

11月CPIが追加利下げ期待に影響及ぼすか=今週の

ワールド

トランプ氏、就任初日に議会襲撃事件の被告ら恩赦へ

ビジネス

中国外貨準備、11月末時点で3.266兆ドル 予想
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:サステナブルな未来へ 11の地域の挑戦
特集:サステナブルな未来へ 11の地域の挑戦
2024年12月10日号(12/ 3発売)

地域から地球を救う11のチャレンジと、JO1のメンバーが語る「環境のためできること」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    2年半の捕虜生活を終えたウクライナ兵を待っていた、妻の「思いがけない反応」...一体何があったのか
  • 2
    人が滞在するのは3時間が限界...危険すぎる「放射能の島」の内部を映した映像が話題 「衝撃だった」
  • 3
    「炭水化物の制限」は健康に問題ないですか?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    「糖尿病の人はアルツハイマー病になりやすい」は嘘…
  • 5
    キャサリン妃が率いた「家族のオーラ」が話題に...主…
  • 6
    電力危機の救世主は「廃水池」だった...「浮くソーラ…
  • 7
    白い泡が大量発生...インド「下水汚染された川」に次…
  • 8
    朝晩にロシア国歌を斉唱、残りの時間は「拷問」だっ…
  • 9
    2027年に「蛍光灯禁止」...パナソニックのLED照明は…
  • 10
    シャーロット王女の「史上最強の睨み」がSNSで話題に
  • 1
    「炭水化物の制限」は健康に問題ないですか?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 2
    2年半の捕虜生活を終えたウクライナ兵を待っていた、妻の「思いがけない反応」...一体何があったのか
  • 3
    国防に尽くした先に...「54歳で定年、退職後も正規社員にはなりにくい」中年自衛官に待ち受ける厳しい現実
  • 4
    健康体の40代男性が突然「心筋梗塞」に...マラソンや…
  • 5
    朝晩にロシア国歌を斉唱、残りの時間は「拷問」だっ…
  • 6
    NewJeansの契約解除はミン・ヒジンの指示? 投資説な…
  • 7
    【クイズ】核戦争が起きたときに世界で1番「飢えない…
  • 8
    ついに刑事告発された、斎藤知事のPR会社は「クロ」…
  • 9
    シリア反政府勢力がロシア製の貴重なパーンツィリ防…
  • 10
    肌を若く保つコツはありますか?...和田秀樹医師に聞…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
  • 9
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 10
    「炭水化物の制限」は健康に問題ないですか?...和田…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中