最新記事
中国経済

中国経済に深刻な課題...今後10年でアメリカ全人口分が退職する「高齢化」で、経済モデル転換にも暗雲

2024年1月20日(土)20時03分
ロイター
急速に進む中国の高齢化

中国の高齢化は国内消費の拡大と膨れ上がる債務の抑制という政府の目標を脅かし、長期的な経済成長見通しに深刻な課題を突きつけている。写真は北京の公園を訪れる高齢者。16日撮影(2024年 ロイター/Tingshu Wang)

中国の高齢化は国内消費の拡大と膨れ上がる債務の抑制という政府の目標を脅かし、長期的な経済成長見通しに深刻な課題を突きつけている。

2023年の出生率が過去最低となり、新型コロナウイルスによる死亡が相次いだ結果、2年連続で人口が減少。労働人口も大幅に減ることなどにより、政策当局者が懸念する構造的不均衡が悪化する。

中国経済に占める家計消費の割合はすでに世界で最も低い水準にあるほか、年金や高齢者福祉を担う地方政府の多くは数十年にわたる信用による投資主導型成長の結果、多額の債務を抱えている。

ビクトリア大学(メルボルン)政策研究センターのシニアリサーチフェロー、シウジェン・ペン氏は「中国の年齢構成の変化は経済成長を減速させるだろう」と述べた。

今後10年間では、現在50─60歳の約3億人(中国最大の年齢層集団で米国のほぼ全人口に匹敵)が退職する見込みだ。ただ、中国科学院によると、35年までに年金制度が資金不足に陥ると予想されている。

低い定年

中国は定年が世界で最も低い国の一つであり、男性は60歳、ホワイトカラーの女性は55歳、工場で働く女性は50歳となっている。今年は過去最高の2800万人がリタイアする予定だ。

無職のリー・ジューリンさん(50)は、国有企業でキャリアを積んだ夫が27年にリタイアした後、月約5000─7000元(697─975ドル)の年金だけに頼ることに不安を感じている。

リーさんは一人娘の「負担を減らそう」と出費を減らすなど余念がない。「娘が結婚すれば自分の家族を養うだけでなく、(夫婦双方の父母)4人の高齢者の面倒を見ることになる。それがどんなに大変なことか想像もできない」と語る。

中国社会は伝統的に、親が年をとっても子どもが経済的に支え、同居して介護することを期待してきた。

しかし、多くの欧米諸国と同様、急速な都市化によって若者は大都市に移り住み、親元を離れるようになった。自身や政府の給付に頼る高齢者が増えている。

米ウィスコンシン大学マディソン校の人口統計学者、イー・フーシェン氏は、20年には1人の退職者を支える労働者が5人いたが、35年には2.4人、50年には1.6人にまで減少すると予測。「中国の年金危機は人道的大惨事に発展する」と述べた。

日本政府によると、同国ではこの比率が22年に2対1で、70年には1.3対1になると予測されている。しかし、日本は高齢化が加速する以前から高所得国だった。

先端医療
手軽な早期発見を「常識」に──バイオベンチャーが10年越しで挑み続ける、がん検査革命とは
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

リクルートHD、求人情報子会社2社の従業員1300

ワールド

トランプ氏の出生権主義見直し、地裁が再び差し止め 

ワールド

米国務長官、ASEAN地域の重要性強調 関税攻勢の

ワールド

英仏、核抑止力で「歴史的」連携 首脳が合意
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:大森元貴「言葉の力」
特集:大森元貴「言葉の力」
2025年7月15日号(7/ 8発売)

時代を映すアーティスト・大森元貴の「言葉の力」の源泉にロングインタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 2
    トランプ関税と財政の無茶ぶりに投資家もうんざり、「強いドルは終わった」
  • 3
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に...「曾祖母エリザベス女王の生き写し」
  • 4
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...AP…
  • 5
    名古屋が中国からのフェンタニル密輸の中継拠点に?…
  • 6
    アメリカを「好きな国・嫌いな国」ランキング...日本…
  • 7
    アメリカの保守派はどうして温暖化理論を信じないの…
  • 8
    犯罪者に狙われる家の「共通点」とは? 広域強盗事…
  • 9
    【クイズ】日本から密輸?...鎮痛剤「フェンタニル」…
  • 10
    ハメネイの側近がトランプ「暗殺」の脅迫?「別荘で…
  • 1
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 2
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 3
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...APB「乗っ取り」騒動、日本に欠けていたものは?
  • 4
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 5
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 6
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコ…
  • 7
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚…
  • 8
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」…
  • 9
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 10
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中