最新記事
安全保障

「一線を越えた」北朝鮮の挑発を中国が黙認する謎

Nuclear Rumblings

2023年11月29日(水)10時55分
イ・ミンヨン(韓国・淑明女子大学客員教授)
偵察衛星の打ち上げを 見守る金正恩総書記

偵察衛星の打ち上げを 見守る金正恩総書記 KCNAーREUTERS

<かつて北朝鮮の核実験について「遺憾の意」を表明した中国が、今回の軍事偵察衛星については沈黙。国境を長く接している中国が、なぜ目をつぶるのか?>

世界で安全保障上の複数の危機が深刻化するなか、その陰でまた別のいくつかの危機がひそかに進行している。

ウクライナの戦争は発生から間もなく2年になろうとしているが、いまだ終わりが見えない。イスラエルはイスラム組織ハマスによる奇襲攻撃の報復としてパレスチナ自治区ガザ地区を攻撃し、民間人もハマス戦闘員もほぼ見境なく殺害している。


この2つの戦争が今、世界の政治と経済に大きな影響を及ぼしている。

しかし世界の注目がウクライナとイスラエルに集まるなかで、国際社会に以前からあった脅威もさらに悪化している。その1つが、北朝鮮の軍事的な挑発行為だ。

北朝鮮は11月21日夜、軍事偵察衛星を打ち上げた。国営メディアによれば、衛星は地球の周回軌道に入ったという。

8月の前回の打ち上げは、ロケットのエンジンに不具合が生じて失敗に終わった。近隣諸国は、北朝鮮がわずか3カ月でどのように問題を解決したかに関心を持っている。

これについて韓国軍当局者は、9月に行われたロシアと北朝鮮の首脳会談の後、ロシアが北朝鮮にエンジニアの派遣を含む技術支援を提供したと語った。

北朝鮮の軍事偵察衛星打ち上げは、国連安保理の決議に違反する。韓国やアメリカ、日本などは、すぐさまこれを非難した。

しかし北朝鮮と最も長く国境を接する中国は沈黙を守り、増大しつつある北の脅威に目をつぶっている。

2012年に北朝鮮が人工衛星を打ち上げた際、中国外務省は遺憾の意を表明した。

しかし今回の打ち上げについては「認識した」と述べるにとどまり、その後「朝鮮半島情勢が今日の状況に至ったのには理由がある」と、打ち上げを正当化するかのようなコメントを出した。

中国が黙認したために、北朝鮮は次の挑発行為の準備を進めることができる。

編集部よりお知らせ
ニューズウィーク日本版「SDGsアワード2025」
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

カナダ中銀、3会合連続で金利据え置き 総裁「関税動

ワールド

トランプ氏、インド関税25%と表明 ロ製兵器購入に

ワールド

トランプ氏、関税発動期限の延長否定 8月1日は「揺

ワールド

トランプ氏、FRBに利下げ改めて要求 「第2四半期
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプ関税15%の衝撃
特集:トランプ関税15%の衝撃
2025年8月 5日号(7/29発売)

例外的に低い日本への税率は同盟国への配慮か、ディールの罠か

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 2
    枕元に響く「不気味な咀嚼音...」飛び起きた女性が目にした「驚きの光景」にSNSでは爆笑と共感の嵐
  • 3
    【クイズ】1位は韓国...世界で2番目に「出生率が低い」国はどこ?
  • 4
    M8.8の巨大地震、カムチャツカ沖で発生...1952年以来…
  • 5
    一帯に轟く爆発音...空を横切り、ロシア重要施設に突…
  • 6
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 7
    「自衛しなさすぎ...」iPhone利用者は「詐欺に引っか…
  • 8
    いま玄関に「最悪の来訪者」が...ドアベルカメラから…
  • 9
    街中に濁流がなだれ込む...30人以上の死者を出した中…
  • 10
    13歳も72歳も「スマホで人生が終わる」...オンライン…
  • 1
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 2
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの習慣で脳が目覚める「セロ活」生活のすすめ
  • 3
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜つくられる
  • 4
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
  • 5
    航空機パイロットはなぜ乗員乗客を道連れに「無理心…
  • 6
    中国が強行する「人類史上最大」ダム建設...生態系や…
  • 7
    「様子がおかしい...」ホテルの窓から見える「不安す…
  • 8
    タイ・カンボジア国境で続く衝突、両国の「軍事力の…
  • 9
    中国企業が米水源地そばの土地を取得...飲料水と国家…
  • 10
    【クイズ】1位は韓国...世界で2番目に「出生率が低い…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 3
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 4
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 5
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの…
  • 6
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは…
  • 7
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜…
  • 8
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 9
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
  • 10
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中