最新記事

世界が尊敬する日本人100

「日台友好」の象徴、「オレンジの悪魔」京都橘高校吹奏楽部を強豪へと押し上げた 「弱弱指導」とは?

Kyoto Tachibana SHS Band

2023年8月17日(木)14時20分
野嶋剛(ジャーナリスト)
京都橘高校吹奏楽部

【公式】京都橘高校吹奏楽部-Youtube

<「オレンジの悪魔」と称される京都橘高校吹奏楽部。その派手な演奏とユニークな教育方法が、世界を魅了し、台湾では教育改革のモデルとして注目される。本誌「世界が尊敬する日本人100」特集より>

京都橘高校吹奏楽部は派手なオレンジ色の衣装と、演奏しながら跳んだり走ったりの激しい動きが有名で「世界一体力を使う吹奏楽部」とも言われる。 

【動画】「日台友情年」記念イベントで演奏する京都橘高校吹奏楽部

その知名度はYouTubeを通して広がり、テレビでも取り上げられた。全日本マーチングコンテストの常連であり、金賞受賞も多数。世界最大の集客を誇る米ローズパレードにも2012年と18年の2度にわたって招待され、高校生たちはいつしか「Orange Devils(オレンジの悪魔)」と呼ばれるようになった。

 「オレンジの悪魔」がグローバルブランドであることをさらに印象付けたのが、昨年10月10日の台湾ナショナルデー(建国記念日)の「日台友情年」記念イベントだ。招聘された彼らは蔡英文総統ら居並ぶ台湾政界の大物たちの前で、15分間にわたって堂々のパフォーマンス。通常は軍事パレードが目立つセレモニーだが、昨年は華やかなオレンジ色の衣装に身を包んだ日本の高校生たちが主役になり、蔡総統のサプライズ面会など「熱烈歓迎」のもてなしを受けた。

 台湾で脚光を集めた理由は派手な演奏に加え、「弱弱指導」と呼ばれるユニークな指導法にあった。同吹奏楽部は女子、男子合わせ100人を超える大所帯。壁にぶつかっても意見の不一致があっても、教員側は介入を最小限に抑え、上級生が下級生をサポートしながら部員間で知恵を絞って課題の解決を目指すスタイルだ。 

見事に統率の取れた演奏はスパルタ教育のたまものかと想像してしまうが、実はその正反対というギャップが新鮮だったようだ。少子化が日本以上に深刻な台湾で教育問題は最大の関心事の一つ。台湾社会ではその後、「橘色悪魔(オレンジの悪魔)に学ぶ〜」が流行語のように連日メディアをにぎわし、台湾の学校教育にインパクトを与えた。長年顧問を務めた田中宏幸の著書『オレンジの悪魔は教えずに育てる』も、台湾で翻訳出版された。 

演奏だけでなく教育的側面でも、ユニークな日本の高校生が学びの対象とされたのだ。

【20%オフ】GOHHME 電気毛布 掛け敷き兼用【アマゾン タイムセール】

(※画像をクリックしてアマゾンで詳細を見る)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

午後3時のドルは155円後半、日銀国債買入圧縮で一

ビジネス

中国、超長期特別国債1兆元を発行へ 景気支援へ17

ワールド

オーストラリア年次予算、2年連続で黒字見込み 14

ビジネス

SUBARU、トヨタと共同開発のEV相互供給 26
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 2

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 3

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 4

    地下室の排水口の中に、無数の触手を蠢かせる「謎の…

  • 5

    年金だけに頼ると貧困ライン未満の生活に...進む少子…

  • 6

    ブラッドレー歩兵戦闘車、ロシアT80戦車を撃ち抜く「…

  • 7

    横から見れば裸...英歌手のメットガラ衣装に「カーテ…

  • 8

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 9

    アメリカでなぜか人気急上昇中のメーガン妃...「ネト…

  • 10

    「終わりよければ全てよし」...日本の「締めくくりの…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 4

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 5

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 6

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 7

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 8

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加…

  • 9

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中