最新記事

異常気象

世界的熱波の原因は、南極で起きている「270万年に1度」の超特異現象?

Antarctic Sea Ice Hits Once-Per-2.7-Million-Year 'Six Sigma' Event

2023年7月27日(木)19時46分
ジェス・トムソン

ローマのスペイン階段、バルカッチャの泉で(7月17日) REUTERS/Guglielmo Mangiapane

<既に後戻りできない臨界点を越えたと、多くの科学者が警告。人類規模の気候危機が私たちを襲う>

南極の海氷面積が平年よりも大幅に縮小し、「6シグマ」と呼ばれるレベルの異常事態が起きている。

6シグマは、統計的な発生確率が限りなくゼロに近いことを意味する。シグマは標準偏差、つまり平均からのズレを表す数値で、この値が大きいほど発生確率が低い特異的な現象ということになる。

南半球の夏には南極の海氷が溶けて氷で覆われた海面の面積が縮小し、冬には再び海水が凍結して海氷面積が拡大する。6、7月は氷で覆われた面積が最も拡大する真冬の8月に向けて、再び海水が凍結し始める時期だが、今年は例年に比べて南極大陸の周りに漂う氷が非常に少なく、その面積は1991〜2020年の平均から大きく外れている。

引退した数学とコンピューター科学の教授であるエリオット・ジェイコブソンが、日本の国立極地研究所のデータを基に作成したチャートで、異常な逸脱が浮き彫りにした。

ジェイコブソンはこのチャートをツイッターに投稿。気候ジャーナリストのジョン・ギボンズがこのチャートをシェアしてこうコメントした。

「不安をあおるつもりはないが......南極では今、いわゆる6シグマ級のイベントが起きている。言い換えれば、750万年に1度レベルの特異事態が起きているということだ。要注意だ」

観測史上最大の減少ペース

その後、ジェイコブソンとギボンズがツイッター上で議論し、計算をやり直して、最終的に「750万年に1度」ではなく、「およそ270万年に1度のレベル」という結論に落ち着いた。

ギボンズのチャートの赤い線は2023年の初めから7月までの標準偏差を示している。南極の夏の終わりから冬にかけて偏差が広がり、7月時点で6シグマ級に達したことが分かる。

実際、メーン大学気候変動研究所は7月19日、南極の海氷面積が昨年同時期に比べ約200万平方キロ縮小しているという分析結果を気候データサイト「クライメート・リアナライザー」で発表した。

「ここ数年、南極周辺の海氷面積は急激に縮小している。南極では今まで、これほど急速な海氷の減少が観測されたことはなかった」と、気候科学者・プレゼンターのエラ・ギルバートはこの発表を受けて本誌に語った。

「これが一時的な現象なのか、大きな変化の始まりなのかは、今の段階でははっきりしない。だが温暖化の進行に伴い、引き続き南極の海氷が減ることは予測できる」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ロシアとの戦争、2カ月以内に重大局面 ウクライナ司

ビジネス

中国CPI、3月は0.3%上昇 3カ月連続プラスで

ワールド

イスラエル、米兵器使用で国際法違反の疑い 米政権が

ワールド

北朝鮮の金総書記、ロケット砲試射視察 今年から配備
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 2

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 3

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加支援で供与の可能性

  • 4

    過去30年、乗客の荷物を1つも紛失したことがない奇跡…

  • 5

    「少なくとも10年の禁固刑は覚悟すべき」「大谷はカ…

  • 6

    ウクライナの水上攻撃ドローン「マグラV5」がロシア…

  • 7

    中国のホテルで「麻酔」を打たれ、体を「ギプスで固…

  • 8

    礼拝中の牧師を真正面から「銃撃」した男を逮捕...そ…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    この夏流行?新型コロナウイルスの変異ウイルス「FLi…

  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 3

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 6

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 7

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 8

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 9

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加…

  • 10

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 7

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 8

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中