最新記事
アメリカ社会

行くも戻るも地獄...アメリカは「貧者の道」

U.S. Border Chaos

2023年6月8日(木)15時55分
ニック・アスピンウォール(ジャーナリスト)

不法入国で刑事罰の恐れ

しかし多くの人が申請を却下される恐れがあり、米自由人権協会(ACLU)などは訴訟で対抗する構えだ。

タイトル42の下では、国境での難民申請はほぼ完全に却下された。しかし、不法入国を何度も試みたというだけで罰されることはなかった。

だが今後は不法入国の試みが刑事罰の対象となり、5~20年間は新たな難民申請が不可能になる恐れがある。手段を選ばず国境を越えれば勝ち、というわけにはいかない。

バイデン政権は新たな施策を移民支援の一環と位置付け、不法移民の生じる根本原因の解消に取り組むとしている。まずはコロンビアとグアテマラに専門の事務所を開設し、そこで事前に合法的な入国を申請できるようにするという。最初は2カ所だが、順次増設する計画だ。

だが計画は遅れている。だから当面は「非常に難しい状況になり得る」と、国土安全保障省も認めている。「結果を出したいが、結果が出るまでには時間がかかる」

ダリエン地峡を越えてパナマ領内に入った人のほとんどは、メテティという町で一息つく。そこでは、タイトル42が失効すれば難民申請のチャンスが増えるという噂も流れていた。

国連によると、昨年はダリエン地峡を渡る人が過去最多の25万人弱に達した。今年は40万人になる可能性があるという。今さら引き返せないし、新規則の詳細が分かるのを待ってはいられないからだ。

だが難民申請の機会が減るのは間違いない。国境まで到達すれば誰でも難民申請の面接を受けられるという常識は、もう通用しなくなる。

CBPの入国手続きアプリを使えば、簡単に面接を予約できるとされる。実際、それで救われた人も多い。だが苦情も噴出している。

「使えない」とぼやくのはナイジェリアから来たアブドルラーマン・スレイマン・オライデ(31)。スマホでアプリを開こうとしても、毎回フリーズしてしまうという。

彼はブラジルで働いていたが、アメリカには親類が住んでいる。だからダリエン地峡を越えて来た。でもアプリが使えなければ、面接の予約もできない。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

最近の急速なウォン安・円安、深刻な懸念共有=日韓対

ワールド

米戦略石油備蓄の第1弾、来週末までに供給 8600

ビジネス

日立とGEベルノバ、東南アジアで小型モジュール炉導

ワールド

米商務省、AI半導体輸出の新規則案を撤回 公表から
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:教養としてのミュージカル入門
特集:教養としてのミュージカル入門
2026年3月17日号(3/10発売)

社会と時代を鮮烈に描き出すミュージカル。意外にポリティカルなエンタメの「魔力」を学ぶ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製をモデルにした米国製ドローンを投入
  • 2
    ショーン・ペンは黙らない――「ウクライナへの裏切りは常軌を逸している」その怒りの理由
  • 3
    有人機の「盾」となる使い捨て無人機...空の戦いに革命をもたらす「新世代ドローン」とは?
  • 4
    世界の視線は中東から日本へ...企業主導で築くインド…
  • 5
    職業別の収入に大変動......タクシー運転手・自動車…
  • 6
    イラン攻撃のさなか、トランプが行った「執務室の祈…
  • 7
    「映画賞の世界は、はっきり言って地獄だ」――ショー…
  • 8
    「イラン送りにすべき...」トランプ孫娘、警護隊引き…
  • 9
    『ある日、家族が死刑囚になって』を考えるヒントに…
  • 10
    ファラオが眠る王家の谷に残されていた「インド系言…
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 3
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」と言われる外国特派員の私が思うこと
  • 4
    「このままよりはマシだ」――なぜイランで米軍の攻撃…
  • 5
    職業別の収入に大変動......タクシー運転手・自動車…
  • 6
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 7
    キャサリン皇太子妃、英連邦デー式典に出席...公開さ…
  • 8
    【長期戦はイラン有利】米側の体制転覆シナリオに暗…
  • 9
    ショーン・ペンは黙らない――「ウクライナへの裏切り…
  • 10
    世界の視線は中東から日本へ...企業主導で築くインド…
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 5
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 6
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を…
  • 7
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 8
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 9
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 10
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中