最新記事
ウクライナ情勢

ウクライナ、ロシア後退した地域に訪れたのは安心ではなく「隣人への不信」

2023年5月22日(月)11時13分
ロイター
「Z」の文字が落書きされた壁の前に立つヘルソン市の地区長バレンティナ・ハラスさん

ウクライナ南部ヘルソン市で地区長の仕事をしているバレンティナ・ハラスさんは、自分は裏切り者ではないと訴える。しかし彼女が住む家の庭の壁には、赤いペンキでウクライナ人でありながらロシアのファシストであることを意味する「ラシスト(Rashist)」という言葉や、モスクワの戦争マシンへの支持の象徴とされる「Z」の文字がびっしり書き込まれている。写真は自宅の外に立つハラスさん。3日撮影(2023年 ロイター/Carlos Barria)

ウクライナ南部ヘルソン市で地区長の仕事をしているバレンティナ・ハラスさん(74)は、自分は裏切り者ではないと訴える。

しかし彼女が住む家の庭の壁には、赤いペンキでウクライナ人でありながらロシアのファシストであることを意味する「ラシスト(Rashist)」という言葉や、モスクワの戦争マシンへの支持の象徴とされる「Z」の文字がびっしり書き込まれている。

8カ月余りにわたって占領していたロシア軍が昨年11月に撃退された後も、なおロシア側の容赦ない砲爆撃にさらされているヘルソン。そこに渦巻くのは相互不信と恐怖だ。

ロシア軍の占領から半年が経過した時点で、隣人同士が疑心暗鬼に陥り、裏切り者がどこから現れても不思議はないと思わせる状況になった。

ハラスさんの場合は、昨年11月26日にウクライナ軍の関係者4人が自宅を訪れ、ロシアに協力した疑いがあると告げられた。事実と認められれば最大で10―15年の禁固刑を科せられる重罪だ。関係者らは家宅捜索をして彼女のコンピューターと携帯電話を押収し、近所の人たちから彼女がロシアに従い、ロシアのパスポートを取得するよう積極的に呼びかけたとの申し立てがあったと説明したという。

その後ハラスさんは警察からも尋問されたが、今のところ具体的な罪状を挙げられて逮捕ないし起訴はされていない。もちろん彼女は全ての容疑を否定し、なぜ協力者のレッテルを貼られたのかも見当が付かないと困惑。ロシア軍が追い出されたのはうれしいと付け加えた。

「正直なところ、何が何だか分からない。捜査結果でも何も見つからなかった」と涙ながらに話した。

一方、隣人のイリーナさんの説明は全く異なる。

イリーナさんは「ハラスさんは公然とロシアを支持し、ロシアは偉大で、自分はウクライナの支配下で恐ろしい思いをしたと誰彼となく触れて回っていた。それは決してこっそりとした告白ではなかった」と語った。

さらに「住民らはハラスさんがすぐ連行されると思っていた。われわれは何カ月間も彼女を弾劾する文書を書いてきた。だが彼女は逮捕されず、住民はショックを受けている」と打ち明けた。

まちづくり
川崎が「次世代都市モデルの世界的ベンチマーク」に──「世界に類を見ない」アリーナシティプロジェクトの魅力
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

イラン紛争、アルミ業界にも影響拡大 カタール製錬所

ワールド

米、イランで自爆型ドローンを初投入 披露からわずか

ワールド

トランプ氏、英首相は「チャーチルではない」 イラン

ワールド

ラトニック米商務長官、エプスタイン問題巡り証言へ 
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプのイラン攻撃
特集:トランプのイラン攻撃
2026年3月10日号(3/ 3発売)

核開発の断念を迫るトランプ政権が攻撃を開始。イランとアメリカの本格戦争は始まるのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビザの壁、会社都合の解雇、帰国後も続く苦境
  • 2
    縫いぐるみが相棒、孤独なサル「パンチくん」がバズった理由
  • 3
    少子化に悩む韓国で出生率回復...昨年過去最大の伸び率を記録した「勝因」と「今後の課題」
  • 4
    サファリ中の女性に悲劇...ライオンに「くわえ去られ…
  • 5
    イラン猛反撃、同士討ちまで起きる防空戦はいつまで…
  • 6
    核合意寸前、米国がイラン攻撃に踏み切った理由
  • 7
    「死体を運んでる...」Google Earthで表示される「不…
  • 8
    人気の女性インフルエンサー、「直視できない」すご…
  • 9
    イランへの直接攻撃は世界を変えた...秩序が崩壊する…
  • 10
    「日本食ブーム」は止まらない...抹茶、日本酒に「あ…
  • 1
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからくりとリスク
  • 2
    村瀬心椛は「トップでなければおかしい」...スノボの謎判定に「怒りの鉄拳」、木俣椋真の1980には「ぼやき」も
  • 3
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビザの壁、会社都合の解雇、帰国後も続く苦境
  • 4
    BTS復活...でも、韓国エンタメが「苦境」に陥っている
  • 5
    中国、4隻目の空母は原子力艦か──世界3番目の原子力…
  • 6
    縫いぐるみが相棒、孤独なサル「パンチくん」がバズ…
  • 7
    「毎日が人生最後の日」だと思って酒を飲む...84歳医…
  • 8
    少女買春に加え、国家機密の横流しまで...アンドルー…
  • 9
    中国で今まで発見されたことがないような恐竜の化石…
  • 10
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 3
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 4
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 5
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 6
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 7
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 8
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中