最新記事
教育

年々高額になる学校の制服には市場原理の導入を

2023年4月12日(水)11時00分
舞田敏彦(教育社会学者)
制服差の学生たち

中学・高校の制服代は決して少額ではない ferrantraite/iStock.

<使い済みの制服を譲り受ける「リユース」で済ませる世帯も増えている>

最近、学校の制服に関するニュースを見かけることが多い。これまで当たり前とされてきた性別の区別をなくす、いわゆる「ジェンダーレス化」の動きだ。自身が認識する性と生物学的な性が一致しない、性同一性障害の生徒への配慮もある。

もう1つは価格だ。この春、子どもが中学校や高校に入学した世帯は制服を購入したと思うが、価格が高いと感じた保護者は多いだろう。学校の制服に法的根拠はなく、制服を導入するか、どういう制服を採用するかは,各学校(自治体)の裁量に委ねられている。東京の公立小学校が、(独断で)海外の高級ブランドの制服を採用したこともある。小学生は体の成長が著しく、在学中に何回か制服を新調しないとならないので、保護者にすればたまったものではない。

小学校で制服を採用している学校は多くないが、中学校や高校はほぼ100%だ。新入生(1年生)の制服代にいくらかかるかは、文科省の『子供の学習費調査』で分かる。<表1>は、1990年代から現在までの時系列推移を整理したものだ。

data230412-chart01.png

中学校をみると、1994年度では4万4000円だったが、小刻みな変動を経て2021年度では5万2000円となっている。高校は、同じ期間にかけて5万3000円から6万9000円に増えている。特に近年の伸び幅が大きく、物価高を経た今年春では、もっと上がっているだろう。

中学校の制服代は5万円、高校は7万円。少額と言える額ではない。指定の体操着や内履き等も含めると、さらに出費はかさむ。

右側の支出者率は、制服代を支出したという保護者の割合で、制服を新たに買った家庭のパーセンテージとみていい。中学校では、昔とくらべて減少の傾向で2021年度では95.1%、裏返すと4.9%の家庭は制服代を支出してないことになる。自治体の就学援助制度を使ったり、使い済みの制服を譲り受けたりする世帯が増えているためと思われる。後者は「リユース」で、インターネットを使って需要と供給を結び付ける取り組みが盛んだ。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ウクライナ大統領、和平巡り米特使らと協議 「新たな

ワールド

プーチン大統領、トランプ氏にクリスマスメッセージ=

ワールド

ローマ教皇レオ14世、初のクリスマス説教 ガザの惨

ワールド

中国、米が中印関係改善を妨害と非難
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指すのは、真田広之とは「別の道」【独占インタビュー】
  • 4
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 5
    「時代劇を頼む」と言われた...岡田准一が語る、侍た…
  • 6
    「衣装がしょぼすぎ...」ノーラン監督・最新作の予告…
  • 7
    ノルウェーの海岸で金属探知機が掘り当てた、1200年…
  • 8
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 9
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 10
    【銘柄】「Switch 2」好調の任天堂にまさかの暗雲...…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 4
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 5
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 6
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 7
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 8
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 7
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中