最新記事
米中対立

フィリピン、米軍が利用可能な基地4カ所発表 中国対処シフトを鮮明に

2023年4月4日(火)18時54分
大塚智彦

比大統領府は「新たに追加された4カ所は戦略的に極めて重要だ」としている。比政府はEDCAに基づく基地などはあくまで米軍の使用が可能な場所であり、米軍が常に駐留する米軍基地ではないと強調。自然災害などの救援活動にも携わる場所であり、普段はフィリピン軍の物資集積所などとしての機能も有していると説明している。

一部州知事が反対表明

こうした政府の丁寧な説明の背景には、新たに追加された4カ所のうち海軍基地と民間空港が位置するルソン島北東部カガヤン州のマヌエル・マンバ知事が「米軍の使用」に反対を表明しているという事情がある。

マンバ知事は政府の公表以前の3月に「州内に追加される2カ所があると非公式に伝えられた」と一部報道機関に漏らしていた。

マンバ知事は有事などに米軍が基地や空港を使用して展開することになれば米中の対立に同州が巻き込まれる恐れがあり、州民の安全確保の観点から異議を唱えているのだ。

これに対しマルコス大統領は「反対している地方に対してはEDCAに基づく米軍による基地使用の重要性を説明していく」として、今後協議を通じて州政府や地元民の理解と支持を得ていく方針を明らかにしている。

マルコス大統領は1月に北京を訪問し、習近平主席との首脳会談に臨み、その席で南シナ海問題を提起し、習近平主席からは「友好的な協議を通じて解決したい」との言質を得た。

しかしその後も中国海警局船舶による南シナ海でフィリピンの排他的経済水域(EEZ)ヘの侵入やフィリピン沿岸警備隊艦艇へのレーザー照射事案など悪質な嫌がらせや妨害行動が続いており、フィリピンの対中世論は厳しさを増している。

いずれにしろ追加された4カ所が比米による中国対処の強化につながることは明白で中国側の猛反発が予想されている。

otsuka-profile.jpg[執筆者]
大塚智彦(フリージャーナリスト)
1957年東京生まれ。国学院大学文学部史学科卒、米ジョージワシントン大学大学院宗教学科中退。1984年毎日新聞社入社、長野支局、東京外信部防衛庁担当などを経てジャカルタ支局長。2000年産経新聞社入社、シンガポール支局長、社会部防衛省担当などを歴任。2014年からPan Asia News所属のフリーランス記者として東南アジアをフィールドに取材活動を続ける。著書に「アジアの中の自衛隊」(東洋経済新報社)、「民主国家への道、ジャカルタ報道2000日」(小学館)など

ニューズウィーク日本版 習近平独裁の未来
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2026年2月17号(2月10日発売)は「習近平独裁の未来」特集。軍ナンバー2の粛清劇は強権体制の揺らぎか、「スマート独裁」強化の始まりか

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


資産運用
「高市トレード」に「トランプ関税」......相場が荒れる今こそ投資家が目を向ける「世界通貨」とは
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

アングル:戦闘で労働力不足悪化のロシア、インドに照

ワールド

アングル:フロリダよりパリのディズニーへ、カナダ人

ビジネス

NY外為市場=ドル横ばい、米CPI受け 円は週間で

ビジネス

米国株式市場=3指数が週間で下落、AI巡る懸念継続
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:習近平独裁の未来
特集:習近平独裁の未来
2026年2月17日号(2/10発売)

軍ナンバー2の粛清は強権体制の揺らぎか、「スマート独裁」の強化の始まりか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 2
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発される中国のスパイ、今度はギリシャで御用
  • 3
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 4
    がんは何を食べて生き延びるのか?...「ブドウ糖」の…
  • 5
    50歳には「まったく見えない」...信じられないレベル…
  • 6
    川崎が「次世代都市モデルの世界的ベンチマーク」に─…
  • 7
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 8
    「ドルも弱い」なのになぜ、円安が進む? 「ドル以外…
  • 9
    毛沢東への回帰? それとも進化? 終身支配へ突き…
  • 10
    「ヒンメルならそうした」...コスプレイヤーが消火活…
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 3
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 4
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 5
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 6
    がんの約4割は、日々の取り組みで「予防可能」...予…
  • 7
    ビジネスクラスの乗客が「あり得ないマナー違反」...…
  • 8
    がんは何を食べて生き延びるのか?...「ブドウ糖」の…
  • 9
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
  • 10
    台湾発言、総選挙...高市首相は「イキリ」の連続で日…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 6
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 7
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 8
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 9
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 10
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中