最新記事
ロシア

ロシア裁判所、反体制派カラムルザ氏に禁錮25年 米独仏など非難

2023年4月18日(火)11時11分
ロイター
ロシアの反体制活動家のウラジーミル・カラムルザ氏

ロシアの裁判所は17日、政府に批判的なジャーナリストで活動家のウラジーミル・カラムルザ氏(写真)に対し、国家反逆罪などで25年の禁固刑を言い渡した。裁判所で17日撮影の提供写真。(2023年 ロイター)

ロシアの裁判所は17日、政府に批判的なジャーナリストで活動家のウラジーミル・カラムルザ氏に対し、国家反逆罪などで25年の禁錮刑を言い渡した。反体制派に対する裁判ではウクライナ侵攻以降で最も厳しい判決となった。

検察側は同氏がウクライナ侵攻を批判したことで国家に反逆し、軍の信用を貶めたと主張していた。

先週行われた最終弁論で、同氏は自身の裁判について、独裁者スターリンによる1930年代の見せしめ裁判と同様だと批判。無罪を求めることを拒否し、発言の全てを誇りに思うと述べていた。

カラムルザ氏は2015年と17年の2回にわたって急病になり昏睡状態に陥ったが、最終的に回復した。同氏はロシア治安当局が毒を盛ったとしている。

カラムルザ氏は41歳。ロシアと英国の国籍を持ち、家族は米国在住。戦争反対を唱えるためにロシアに帰国し、逮捕された。逮捕直前に米CNNが放映したインタビューで、ロシアは「殺人者の政権」によって運営されていると非難していた。

カラムルザ氏の弁護士によると、法廷でこの日の審理を落ち着いた様子で聞いていたカラムルザ氏は、禁錮25年の判決が下された後、笑顔で「自分が行ってきたこと全てが正しかったと理解できた。自分の行動や、市民として、愛国者として信じてきたことに対して最高の得点だ」と語ったという。

カラムルザ氏に対し禁錮25年の判決が下されたことを受け、英政府はロシアの駐英大使を呼び出し「政治的な動機による」有罪判決に抗議。英国のデボラ・ブロンナート駐ロシア大使はモスクワの裁判所の前で記者団に対し、カラムルザ氏はロシアのウクライナ戦争に反対する勇敢な発言をしたために処罰されたと述べ、同氏の釈放を要求した。

米国のリン・トレーシー駐ロシア大使もブロンナート大使と共に裁判所の前に立ち、カラムルザ氏に対する有罪判決は反対意見を封じ込めようとする試みだとし、「政府の行動に対する批判を犯罪にすることは、強さではなく弱さの表れだ」と非難した。

米国務省は声明で、ウクライナに対する侵略戦争に反対を表明したことでカラムルザ氏に禁錮刑の判決が下されたことを非難するとし、「カラムルザ氏はロシア政府がエスカレートさせている弾圧の新たな標的だ」とした。

英米のほか、独仏ノルウェーなども非難。国連のトゥルク人権高等弁務官は、判決は「ロシアにおける法の支配と市民に対する新たな打撃」だと指摘。「人権を行使したために自由を奪われることがあってはならない」とし、カラムルザ氏の即時釈放を呼びかけた。

ロシア大統領府のペスコフ報道官は判決について記者団からコメントを求められた際、大統領府は裁判所の判決について決してコメントしないと述べた。

政治分析会社R・ポリティクの創業者でロシア政治に詳しい専門家タチアナ・スタノバヤ氏は、カラムルザ氏に対する判決は新たに拡大された反逆罪の定義に基づいているため、警戒が必要と指摘。「シグナルを発すること」を目的とした判決だったため、類似の判決が続く可能性があるとし、「今後、ロシア国内でプーチン政権を批判すれば、治安当局は選り好みをせず誰でも拘束する。(カラムルザ氏の判決は)全ての反プーチン活動家への警告だった」と述べた。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2023トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


ビジネス
栄養価の高い「どじょう」を休耕田で養殖し、来たるべき日本の食糧危機に立ち向かう
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、ウォルツ大統領補佐官解任へ=関係筋

ビジネス

物言う株主サード・ポイント、USスチール株保有 日

ビジネス

マクドナルド、世界の四半期既存店売上高が予想外の減

ビジネス

米KKRの1─3月期、20%増益 手数料収入が堅調
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 5
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 6
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 7
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 8
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 9
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 10
    【徹底解説】次の教皇は誰に?...教皇選挙(コンクラ…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中