最新記事

ロシア

核魚雷「ポセイドン」、世界最大のロシア原潜「ベルゴロド」に搭載、配備か

Russia's Next-Best Submarine Dwarfs Largest in U.S. Fleet

2023年2月8日(水)18時21分
トーマス・キカ

『レッド・オクトーバーを追え』のモデルにもなった原潜ドミトリー・ドンスコイ(写真)は退役、さらに大きくさらに恐るべき原潜が後を継ぐ(2017年、サンクトペテルブルク) Anton Vaganov-REUTERS

<専門家が決して勝負してはならないと言うポセイドンは、空母も海岸沿いの軍事基地もすべて呑み込む終末兵器。まもなく最大最新の原潜に搭載されるという>

ロシア海軍で最大かつ最強の原子力潜水艦が引退したが、後継の潜水艦はさらに強大で、いくつかの点でアメリカ海軍最大、最強の潜水艦をも凌駕する脅威になる。

ここ数カ月、長くロシア艦隊最大の原子力潜水艦だったドミトリー・ドンスコイが退役したという噂が流れていたが、ロシア海軍支援運動を率いるウラジーミル・マルツェフは2月6日、ロシアの報道機関に対し、ドミトリー・ドンスコイの正式引退を明らかにした。この艦は、冷戦時代にソビエト連邦で開発されたタイフーン型潜水艦の最後の一隻で、世界最大の潜水艦として広く認められていたが、今は解体が始まっているという。

次の主役は昨年7月に就役したオスカーII級潜水艦ベルゴロドだ。

20発の弾道ミサイルを搭載したドミトリー・ドンスコイと違ってベルゴロドはまだ核兵器の装備を完了していないが、ロシア海軍が「黙示録の兵器」と喧伝する核魚雷「ポセイドン」を搭載できる。

「核兵器を搭載した巨大魚雷ポセイドンは世界の歴史からしてもユニークな存在だ」と、アメリカの潜水艦専門家H.I.サットンは昨年3月の英海軍の公式新聞ナーバル・ニュースに書いている。「ポセイドンは全く新しいカテゴリーの兵器だ。おかげでロシアも西側諸国も、海軍の編成を再構築することになり、それは新たな装備と新たな対抗兵器の開発につながるだろう」

核戦争はロシア有利に

ベルゴロドは現存する世界最大の潜水艦だ。全長約184メートルで、米海軍最大のオハイオ級潜水艦(全長171メートル)よりもはるかに長い。

オハイオ級潜水艦の後継艦として開発され、2031年の就役が予定されるコロンビア級潜水艦もサイズはオハイオ級と同じになるため、今後しばらくロシアのベルゴロドの最大の地位は揺るがない。

「ベルゴロドが、ロシアによる宣伝どおりの性能を発揮するとしたら、ロシアの強力な戦略的資産となるだろう」と軍事専門家ダニエル・デービスは本誌に語った。「強力な兵器は数あるが、特筆すべきはやはり核魚雷ポセイドンだ。これは世界で最も強力な潜水艦発射兵器の1つだろう。沿岸の都市や海軍基地を破壊し、空母のような主要な水上戦闘艦を標的にすることができる」。

「ロシアはウクライナ戦争において、通常兵器による地上戦では劣勢かもしれないが、戦略兵器の場合、話は別だ。限定的な核攻撃の応酬が起きた場合、アメリカの最も強力な水上戦闘艦の一部を破壊することもできる」と、デービスは付け加えた。「だからわれわれは、いかなる理由があってもロシアと核戦争をやってはいけない」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

石破首相「双方の利益になるよう最大限努力」、G7で

ワールド

米中貿易枠組み合意、軍事用レアアース問題が未解決=

ワールド

独仏英、イランに核開発巡る協議を提案 中東の緊張緩

ワールド

イスラエルとイランの応酬続く、トランプ氏「紛争終結
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 5
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 6
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 7
    若者に大不評の「あの絵文字」...30代以上にはお馴染…
  • 8
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 9
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 10
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 5
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 9
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中