最新記事

ウクライナ情勢

東部のロシア軍精鋭部隊は戦闘不能、主力戦車も1年で半分喪失、このままではロシア大攻勢は不発に終わる?(英米専門家)

Elite Russian Brigades 'Combat Ineffective' After Heavy Losses: U.K.

2023年2月21日(火)19時32分
ブレンダン・コール

ウクライナ軍に破壊されたロシアの主力戦車T-72B  Kacper Pempel-REUTERS

<このままではウクライナ東部の大攻勢は不発に終わる。支配地域を広げるためには徴兵による大規模動員が必要だ>

ロシア軍は、ウクライナ東部で多くの人員を喪失しており、これが同地域で一気に攻勢をかけたいロシア軍の作戦に影響が出始めていると、複数のイギリス国防省幹部が語った。

イギリス国防省(MOD)は日次報告で、ロシア側に多くの死傷者が発生していると指摘。特にドネツク州のバフムトやウフレダールでこの傾向が強く、「『精鋭』とされる第155および第40海軍歩兵部隊が非常に多くの人員を喪失し」これにより「戦闘不能に陥っている可能性が高い」と指摘している。

イギリス国防省は2月20日、ロシア軍は、ウラジーミル・プーチン大統領によるウクライナへの侵攻が始まってから1年となる2023年2月24日の節目に合わせて戦果を誇示する政治的な圧力に直面している、とも指摘した。

「ロシアは、開戦から1年目の節目に合わせて、バフムトを掌握したと主張する可能性が高い。ただしこれは、戦場での現状を無視した宣言になる」と、イギリス国防省の高官は語り、この春の大規模作戦で巻き返しができなければ、「ロシア上層部内部の緊張が増すだろう」と指摘した。

イギリス国防省とは別の西側の分析でも、ロシア軍は装備の更新に問題を抱えており、ルハンスク州における冬季の攻撃作戦でも、優勢を得るためのリソースに欠けているとみられるとの見解が示された。

主力戦車の半分を喪失

アメリカのシンクタンク、戦争研究所(ISW)は2月19日、ロシアは「膨大な数の」戦車を喪失しており、失った戦車の規模は16連隊に相当するとの見解を示した。それによれば、侵攻以降の1年間で、主力戦車のT-23BとT-72NB3Mのうちざっと1000両を破壊され、500両を奪われたという。使える戦車はあまり残っていないのではないか、とISWは見る。

ロシア軍が、再構成された機械化部隊を予備軍として保有しているのはほぼ確実だが戦力は限定的で、ルハンスク州の「現在の情勢を大きく変えることはできないとみられる」と、ISWのレポートは述べる。

ロシア軍が「一時的に」勢いを増す可能性はあるが、その場合でも「目標に遠く及ばないところで、攻撃の限界点に達する可能性が高く、戦場で大幅に進軍するには至らないとみられる」と、ISWは付け加えた。

アメリカの軍事関連シンクタンク、海軍分析センター(CNA)でロシア研究ディレクターを務めるマイケル・コフマンは2月18日、出演したポッドキャスト「ウォー・オン・ザ・ロックス」で、ロシア軍の新たな攻勢は、ウフレダールへの攻撃を皮切りに3週間前に始まっていたと指摘。ドネツクおよびルハンスクの2州では、5つ前後の前進軸が設けられていると指摘した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ウクライナ安全保証を協議、NATO加盟は議論せず=

ビジネス

米アリアンツ・ライフ、サイバー攻撃で顧客110万人

ビジネス

豪ウッドサイド、上期は前年比24%減益 価格下落と

ワールド

ブラジル、米による貿易慣行調査を批判 対話呼びかけ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:台湾有事 そのとき世界は、日本は
特集:台湾有事 そのとき世界は、日本は
2025年8月26日号(8/19発売)

中国の圧力とアメリカの「変心」に危機感。東アジア最大のリスクを考える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに感染、最悪の場合死亡も
  • 2
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コロラド州で報告相次ぐ...衝撃的な写真の正体
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    【クイズ】2028年に完成予定...「世界で最も高いビル…
  • 5
    AIはもう「限界」なのか?――巨額投資の8割が失敗する…
  • 6
    【クイズ】次のうち、「海軍の規模」で世界トップ5に…
  • 7
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
  • 8
    アラスカ首脳会談は「国辱」、トランプはまたプーチ…
  • 9
    「これからはインドだ!」は本当か?日本企業が知っ…
  • 10
    米ロ首脳会談の失敗は必然だった...トランプはどこで…
  • 1
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 2
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...「就学前後」に気を付けるべきポイント
  • 3
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コロラド州で報告相次ぐ...衝撃的な写真の正体
  • 4
    「笑い声が止まらん...」証明写真でエイリアン化して…
  • 5
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 6
    「長女の苦しみ」は大人になってからも...心理学者が…
  • 7
    【クイズ】次のうち、「海軍の規模」で世界トップ5に…
  • 8
    「何これ...」歯医者のX線写真で「鼻」に写り込んだ…
  • 9
    債務者救済かモラルハザードか 韓国50兆ウォン債務…
  • 10
    「ゴッホ展 家族がつないだ画家の夢」(東京会場) …
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 7
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 8
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
  • 9
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
  • 10
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中