最新記事

中国

中国の反体制派は「同期の非対称」問題を克服し、体制を転覆させられるか

THE CHINESE REVOLT ENDS?

2023年1月13日(金)12時25分
練乙錚(リアン・イーゼン、香港出身の経済学者)

230117p18_CGH_02.jpg

ベルリンの中国大使館前で中国のデモ弾圧に抗議する人々 OMER MESSINGER/GETTY IMAGES

同期の非対称は天安門事件の当時から明らかだった。あのとき、曲がりなりにも民主化運動が盛り上がったのは北京だけだった。

上海では、市の党委書記だった江沢民が巧みに民主派を抑え込んだ。それ以外の場所では大きな動きがなかった。だから北京の反乱は孤立し、やがて機関銃と戦車で蹴散らされた。

しかも、この非対称性は一段と大きくなっている。政権側はネットや全国的な交通網をフルに活用する一方、反体制派によるアクセスは簡単に規制できる。

だから1989年の民主化運動に比べると、今回の反乱はずっと初歩的な段階で息絶えようとしている。抗議活動は散発的で、都市部に限られ、まとまりを欠いていた。つまり革命には程遠い。

対照的に1911年の辛亥革命の前には、多くの省が清朝からの独立を宣言していた。清朝は領内の各地で起きる反乱に対処できず、各地に革命政府が樹立され、やがて王朝の崩壊と国民党の台頭につながった。

この歴史に鑑み、後に台湾の李登輝(リー・トンホイ、元総統、故人)は、中国は7つの独立国(チベット、新疆、内モンゴル、満州、華北、華南、そして台湾)に分割するのがいいと主張した。そうすれば政治改革が進み、社会はよくなると考えた。

しかし、このような提言をした政治家は李登輝が最初ではない。

香港デモを評価する声が

1920年には毛沢東が、もっとラジカルな計画を提唱していた。中国を27の独立した地域に分割し、それぞれが独自に革命を進めるという構想だ。とりわけ湖南省での共和国樹立にこだわっていた。

しかし翌1921年にソ連の後押しで中国共産党が創設されると、毛沢東は中国を別の形で分割することにした。ソ連共産党の指導に従い、辺境の地には「中華ソビエト共和国」を樹立し、その他の地域には「ソビエト政府」を置くこととした。

ちなみに習近平の父である習仲勲(シー・チョンシュン)は、1934年から1936年にかけて西北部で2つのソビエト政府を率いていた。おかげで毛沢東は延安に入ることができ、そこを拠点に、革命を全土に広げることができた。

つまり「分割して革命」の方式は近代中国において2度成功している。では、3度目も可能なのだろうか。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

サノフィ、米ダイナバックスを22億ドルで買収 成人

ワールド

米、ベネズエラ石油「封鎖」に当面注力 地上攻撃の可

ビジネス

午前の日経平均は小反発、クリスマスで薄商い 値幅1

ビジネス

米当局が欠陥調査、テスラ「モデル3」の緊急ドアロッ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 2
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足度100%の作品も、アジア作品が大躍進
  • 3
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...どこでも魚を養殖できる岡山理科大学の好適環境水
  • 4
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者…
  • 5
    ジョンベネ・ラムジー殺害事件に新展開 父「これま…
  • 6
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 7
    ノルウェーの海岸で金属探知機が掘り当てた、1200年…
  • 8
    ゴキブリが大量発生、カニやロブスターが減少...観測…
  • 9
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 10
    「時代劇を頼む」と言われた...岡田准一が語る、侍た…
  • 1
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 4
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 5
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 6
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 7
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 8
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 9
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 10
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 8
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中