最新記事

医療

進む医療用大麻の解禁、減るオピオイド系鎮痛剤の処方 米調査

Medical Marijuana

2023年1月5日(木)13時00分
ジェス・トムソン
医療用大麻

JANIECBROSーE+/GETTY IMAGES

<患者へのマリファナ使用合法化で、依存性の強い鎮痛剤の投与が減ったというデータが──果たして大麻で癌の痛みは緩和できるのか?>

医療用大麻(マリファナ)の合法化が進めば、癌患者に対するオピオイド(原料はアヘンと同じケシの実に由来)系鎮痛剤の処方が減る可能性があるという。

米国医師会報(JAMA)オンライン版に2022年12月1日に掲載された論文で明らかにされた。アメリカでは現時点で、37の州と首都ワシントンで医療用大麻が合法化されており、こうした州では現に、癌患者に対するオピオイド系鎮痛剤の処方が相対的に減っている。

調査対象は乳癌、大腸癌、または肺癌と新たに診断され、治療を受けている18~64歳の患者。論文によれば、彼らに対するオピオイドの投与率(オピオイドを1回以上処方された割合)は5.5~19.2%減っていた。

調査した乳癌患者は3万8189人、大腸癌患者は1万2816人、肺癌患者は7190人。65歳未満で成人の新規患者数が多いことから、これら3種類の癌が調査対象に選ばれた。

強力な合成鎮痛剤のオピオイドは癌を含め、あらゆる種類の痛みの治療に頻繁に使われている。しかし依存性が高いため、治療終了後も長期にわたり医師の処方なしに服用する人が増えている。

実際、19年にはアメリカだけで7万人以上が薬物の過剰摂取で死亡しているが、うち4万8000人はフェンタニルを含む非メタドン系合成オピオイドを摂取していた。

論文の筆頭著者でワイル・コーネル医科大学のユィフア・バオ准教授(医療経済学)は本誌に対し、「癌の種類や診断以前にオピオイドを処方されていたか否かによって数値は異なる」と前置きした上で、「医療用大麻の合法化が進んで、ある程度までオピオイド系の代わりに使われている可能性がある」とした。

大麻の副作用は軽い

医療用大麻は吐き気や神経障害の制御に加え、痛みの緩和にも有効とされる。主要成分はカンナビノイドと呼ばれる化学物質だ。だが鎮痛効果に関するエビデンス(科学的根拠)はまだ不十分とされる。

医療用大麻にも副作用はある。吐き気や脱力感などだが、疼痛緩和医療の情報誌フロンティアズ・イン・ペイン・リサーチに22年に発表された論文によると、「癌治療に用いるカンナビノイドの副作用は、おおむね耐えられる程度」だという。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

独ZEW景気期待指数、12月は45.8に上昇 予想

ワールド

ウクライナ提案のクリスマス停戦、和平合意成立次第=

ビジネス

EUの炭素国境調整措置、自動車部品や冷蔵庫などに拡

ビジネス

EU、自動車業界の圧力でエンジン車禁止を緩和へ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連疾患に挑む新アプローチ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 6
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 7
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 8
    アダルトコンテンツ制作の疑い...英女性がインドネシ…
  • 9
    FRBパウエル議長が格差拡大に警鐘..米国で鮮明になる…
  • 10
    「なぜ便器に?」62歳の女性が真夜中のトイレで見つ…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 7
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 8
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 9
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 10
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中