最新記事

事故

中国が建設するインドネシア高速鉄道で脱線事故 事故車両にカバーかけ証拠隠滅?

2022年12月21日(水)12時40分
大塚智彦

さらにインドネシア政府は高速鉄道の終点でもあるバンドンから北部沿岸部を走る在来線(高速化に日本が協力)について、日本に対して「バンドンからさらに延伸して北部沿岸の在来線と結ぶ計画への参入」を示唆。日本は技術的に困難(狭軌と広軌の違い、中国建設区間とでは安全基準が異なる)であるとの理由で拒絶する姿勢をみせている。

日本側には「何をいまさら」との思いがあることにインドネシア側は思い至らないのだろうとの見方が有力だ。

事故原因捜査で証拠隠滅への懸念

12月19日、インドネシア警察は死傷した中国人労働者の全員の身元を明らかにするとともにすでに18人の事故目撃者を確保しており、目撃証言なども参考にして事故原因の調査に着手したことを発表した。

インドネシア運輸省は国家運輸安全委員会とも協力して「なぜ線路が完成していない区間に作業車両が進入する事態になったのかを中心に事故原因の究明にあたる」としたうえで当面の間全ての工事の中止をKCICに求めた。

警察は場合によってはKCICなどの関係者を呼んで直接事情聴取をする必要性も出てくるとして、事故原因調査には一定の時間がかかるとの見方を示している。

公開された脱線転覆事故の現場では事故車両にカバーをかける作業が行われており、中国人労働者による事故だけに「証拠隠滅」の可能性も指摘されている。

中国は2011年7月に浙江省温州市で起きた高速鉄道の高架上での追突脱線事故で高架下に落下した車両を事故後24時間が経過する前に穴に埋めてしまい「事故原因の調査が始まる前に証拠隠滅を図った」と批判されたことがある。

さらに2019年12月には広東省広州市の地下鉄建設工事現場で道路が突如陥没、通行車両2台が落下した。計3人が車両と共に埋まってしまったが、安否確認も行わずに当局はコンクリートを流し込んで陥没を塞いでしまった。これも「事故原因の隠蔽」とされた。

こうした「実例」が過去にあるだけに、中国側による今回の高速鉄道事故の「隠蔽工作」への懸念が出ているのだ。

この高速鉄道計画は中国の習近平国家主席が進める「一帯一路」構想の一環とされ、インドネシア政府は中国の思惑に乗せられた形となっているが、一連の問題続出によって「中国への受注を最終的に決断」したジョコ・ウィドド大統領への風当たりが強くなっている。

【動画】中国が工事するインドネシア高速鉄道の事故現場はこちら

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

トランプ米政権、航空会社と空港に健康的な食事と運動

ワールド

トルコがロシアからのガス輸送を保証 =ハンガリー首

ワールド

中国首相「関税の影響ますます明白に」、経済国際機関

ビジネス

午前の日経平均は続伸、米FOMC控え様子見姿勢も
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...かつて偶然、撮影されていた「緊張の瞬間」
  • 4
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 5
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 6
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 7
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 8
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 9
    米、ウクライナ支援から「撤退の可能性」──トランプ…
  • 10
    「1匹いたら数千匹近くに...」飲もうとしたコップの…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 6
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 7
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 8
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 9
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 10
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中