最新記事

金融犯罪

暗号資産の「寵児」逮捕は口封じだった?陰で胸を撫で下ろした人々

Sam Bankman-Fried's Arrest May Have Blocked Incriminating FTX Testimony

2022年12月14日(水)19時50分
キャサリン・ファン

ウィスコンシン大学のイオン・マイン准教授もこれに同意する。容疑者が犯罪人引き渡し条約のない国への逃亡を計画している、あるいは証拠隠滅の懸念があるなら、逮捕に踏み切ることもあると本誌に語った。

そうでもないのに当局がこれほど急いで逮捕に踏み切ったことは、複雑なホワイトカラー詐欺事件としては異例と思えるが、起訴状の内容からすれば、捜査は「かなり長い間」続いてきた可能性も高いとマコーリフは言う。

「連邦政府による捜査は、FTXが現実に破綻するよりずっと前から行われていたのかもしれない」と彼は述べた。

バンクマン・フリードが自社の失敗について議会で証言するという決断は、多くの人を驚かせた。特に、経営破綻後にFTXから距離を置こうと躍起になっていた暗号通貨の擁護者たちは仰天した。

逮捕に先立ち、シンシア・ルンミス上院議員(共和党)は、自分が彼の弁護士であったら、間違いなくバンクマン・フリードに証言しないように勧めると語った。「彼が委員会に出席するなんて、とんでもないことだ。それは大きな間違いだと思う」と、彼女はニュースサイト「セマフォー」のジョセフ・ゼバロス・ロイグ記者に語った。

適切な規制への一歩

ゼバロス・ロイグは、「暗号資産業界全体にさらなる汚名を着せることになりそうな破滅的な公聴会」を覚悟していた仮想通貨業界の幹部と投資家にとって、バンクマン・フリードの逮捕は、まさに天の恵みだったと報じた。

ブロックチェーン開発会社ソリダリティのアレックス・マカリーCEOは「バンクマン・フリードの逮捕は、暗号資産業界と世界中にいるFTXの顧客にとって前向きな一歩だ」と述べた。「彼の逮捕は、FTXの被害者に対する説明責任と正義に向けた正しい方向への一歩であり、これが集中型取引所に対する適切な規制を当局に促すことを願っている」

FTXの創業者は結局、公聴会に姿を現さなかったが、アメリカン大学のジェームズ・サーバー教授(行政学)は、13日の公聴会は暗号通貨分野の規制にとって依然として重要だと述べた。

サーバーは本誌の取材に対し、多くの議員が暗号資産規制のための法案提出に積極的に取り組んでいることから、「FTXの破綻は、明確なルールと米政府の直接的な監視がない場合に、顧客の資金に何が起こりうるかを示す好例の1つになった」と語った。

ニューズウィーク日本版 高市早苗研究
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年11月4日/11日号(10月28日発売)は「高市早苗研究」特集。課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら



今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

シリア暫定大統領、ワシントンを訪問へ=米特使

ビジネス

伝統的に好調な11月入り、130社が決算発表へ=今

ワールド

APEC首脳会議、共同宣言採択し閉幕 多国間主義や

ワールド

アングル:歴史的美術品の盗難防げ、「宝石の指紋」を
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 3
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った「意外な姿」に大きな注目、なぜこんな格好を?
  • 4
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 5
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    筋肉はなぜ「伸ばしながら鍛える」のか?...「関節ト…
  • 9
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 10
    【クイズ】12名が死亡...世界で「最も死者数が多い」…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 6
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 7
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 8
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 9
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した…
  • 10
    庭掃除の直後の「信じられない光景」に、家主は大シ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中