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「ゴーストライト!」太陽系を取り囲む淡い光の正体は?

2022年12月12日(月)19時00分
松岡由紀子

銀河は淡い光に覆われている...... ESO/P. Horaklek

<空一面に広がる極めてわずかな光。この光は「ゴーストライト」と呼ばれ、その起源はまだ明らかになっていない......>

輝く星や満ち欠けする月を除けば、夜空は漆黒の闇に見えるが、実際はどれくらい暗いのだろうか。

米アリゾナ州立大学(ASU)、アメリカ航空宇宙局(NASA)、豪マッコリー大学らの研究プロジェクト「スカイサーフ(SKYSURF)」では、ハッブル宇宙望遠鏡が観測した20万枚の画像とこれらから得られる数万件の測定データをもとに、惑星、恒星、銀河、黄道光(太陽系の平面上の塵からの光)からの輝きを差し引いた残光を調べた。その研究成果は「スカイサーフ」の4本目の研究論文としてまとめられ、プレプリントサーバー「arXiv」で公開されている。

無人探査機「ニュー・ホライズンズ」からの観測データを分析

これによると、空一面にホタル10匹の光が広がっているような極めてわずかな光が検出された。この光は「ゴーストライト」と呼ばれ、その起源はまだ明らかになっていない。研究チームは「内太陽系には、四方八方から太陽系に降り注ぐ彗星からの球状の塵が存在し、この塵が太陽光に反射して輝きを発するのではないか」との仮説を示している。

この仮説は、太陽系外縁天体を探査するNASAの無人探査機「ニュー・ホライズンズ」からの観測データを分析した2021年の研究成果でも裏付けられている。2015年に冥王星を通過し、星間空間に向かって移動する「ニュー・ホライズンズ」は、太陽から40~50億マイル(64~80億キロ)の距離で観測を行い、ハッブル宇宙望遠鏡が検出したものよりもやや暗く、より離れた天体からとみられるものを検出した。

研究論文の共同著者でアリゾナ州立大学のティム・カールトン研究員は「我々の分析が正しければ、我々と『ニュー・ホライズンズ』が観測した地点との間にもうひとつ塵の成分が存在することになる。すなわちこれが太陽系の内部から来る残光だ」とし、「我々が測定した残光は『ニュー・ホライズンズ』よりも明るかった。従って、太陽系のはるか外からやってきたものではなく、局所現象だと考えられる」と考察している。

個別の天体以外の光は関心を向けられていなかった

ハッブル宇宙望遠鏡のアーカイブ画像にある光子の95%以上は地球から30億マイル(48億キロ)未満の距離からやってきたものだ。ハッブル宇宙望遠鏡の画像を分析する研究者の多くは、星や銀河といった個別の天体に関心があるため、これらの光子は捨て去られてきた。

アリゾナ州立大学のロジエ・ヴィンドホルスト教授は「これらの光子には重要な情報が含まれており、天体の明るさを高精度で測定できるハッブル宇宙望遠鏡の機能のおかげで、それを抽出できる」と、光子を分析する意義を説いている。

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