最新記事

移民問題

英、移民などの入国者監視に「GPS足輪」 尊厳傷つけ無用との批判も

2022年12月10日(土)10時27分
入国者監視に使われるGPS足輪

GPS足輪で監視されるストレスに耐えきれず自殺を試みる者も…… BBC News / YouTube

英国の入国者収容所に2年間拘留されていたミミさんは、どうしても解放されたくて足首に電子タグを着けることに同意した。だが、自由を味わえたのはつかの間だった。

2カ月後、ミミさんは電子タグを通じて監視されるストレスに耐えきれず、自殺未遂を犯した。

「このタグを見られたくないから、何もできない。恐ろしい」──。そしてある日、ストレスが限界を超えた。

40代のミミさんは、両親が第2次世界大戦後にカリブ諸島から英国に移住したと信じているが、自らの国籍を証明できず、公式には無国籍状態。現在、英国に亡命を申請中で、決定が下されるのは約10年後だという。

「自分の出自については何も知らない。ひどく小さい頃、性的搾取と近代版奴隷制の中で棄てられた」と、トムソン・ロイター財団のビデオインタビューで語った。

英入国者収容所に拘留されている人々に無料で法的代理を提供している団体の「収容入国者保釈」の幹部、ルディー・シュルカインド氏は、電子タグを装着した人々は「信じられないほど尊厳を傷つけられ、らく印を押された気持ちになる」と説明。「街を歩くとタグを着けているのを見られ、危険な、あるいは暴力的な人間だと思われる。考えられないほどつらいことだ」と話した。

英政府は移民削減という長年の約束を果たすべく、在留資格を巡って拘留された人々への電子タグ装着を近年強化している。移民問題は、2016年の国民投票で欧州連合(EU)離脱派が勝利する決め手ともなった。

今年はウクライナ、アフガニスタン、香港から逃れてきた人々や留学生が急増し、移住者数は過去最高の50万4000人に達した。この数字には英仏海峡を小型ボートで渡ってくる人々は含まれていないが、そうした人々も急増している。

非人間的

戦争や貧困、自然災害などで母国を逃れる人は、世界中で記録的な数に達し、各国政府は国境管理強化に足首タグや生体認証データなどのデジタル技術を活用するようになっている。

英国では2016年、移民反対の声に押され、国外退去を命じられた外国籍の人全員についてタグ装着を義務化。人権団体は、非人間的でプライバシーの侵害だと批判している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

訂正(7日配信記事)-英アストラゼネカが新型コロナ

ワールド

EXCLUSIVE-チャットGPTなどAIモデルで

ビジネス

円安、輸入物価落ち着くとの前提弱める可能性=植田日

ワールド

中国製EVの氾濫阻止へ、欧州委員長が措置必要と表明
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    「自然は残酷だ...」動物園でクマがカモの親子を捕食...止めようと叫ぶ子どもたち

  • 3

    いま買うべきは日本株か、アメリカ株か? 4つの「グラフ」から強さを比べる

  • 4

    迫り来る「巨大竜巻」から逃げる家族が奇跡的に救出…

  • 5

    習近平が5年ぶり欧州訪問も「地政学的な緊張」は増す…

  • 6

    ケイティ・ペリーの「尻がまる見え」ドレスに批判殺…

  • 7

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 8

    イギリスの不法入国者「ルワンダ強制移送計画」に非…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 3

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 4

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 5

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 6

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 7

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 8

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 9

    サプリ常用は要注意、健康的な睡眠を助ける「就寝前…

  • 10

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 7

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 8

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 9

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 10

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中