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日本人が知らない、少年非行が激減しているという事実

2022年11月30日(水)11時15分
舞田敏彦(教育社会学者)
日本の少年非行は激減している

ピーク時の1983年には年間30万人以上の非行少年が検挙・補導されていたが…… Oleg Elkov/iStock.

<非行少年の検挙・補導人数は、1983年をピークに減少傾向が続き、現在は10分の1にまで減っている>

未成年者による法の侵犯行為を非行という。非行少年は、14歳以上の場合は犯罪少年、14歳未満の場合は触法少年と括られる(少年法第3条)。刑事責任を問える最低年齢は14歳なので、この年齢に満たない少年は、法に触れる行為をしたということで触法少年と呼ばれる。

非行少年が年間でどれほど出ているかは、法務省の『犯罪白書』に掲載されている、20歳未満の刑法犯検挙・補導人員を見れば分かる(触法少年の場合は「補導」という言葉が使われる)。これによると、2020年の数値は3万2063人。1日90人近くの少年が捕まっている計算で、かなり多いように思える。実際、少年が起こした事件の報道に接することはしばしばで、その中には凶悪なものもある。

だが少年の非行は,昔の方がはるかに多かった。<図1>は、20歳未満の刑法犯検挙・補導人員の長期推移を折れ線グラフにしたものだ。

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少年非行のトレンドは直線的なものではなく、いくつかの波を経て推移している。第1の波は1951(昭和26)年。戦争が終わって間もない頃で、貧しさ故の盗みなどが多かった。第2の波は1964(昭和39)年で、他の時期と比べて暴力犯罪の比重が高かった。10代の少年が学生と勤労者に割れていた頃で、後者の地位不満が暴発することも多かった。

第3の波は1983(昭和58)年。この年の刑法犯検挙・補導人員は31万7438人と戦後最多となる。現在の10倍以上だ。スリル目当ての万引きといった「遊び型」が多く、豊かな社会になったものの、受験競争や管理教育が横行していた当時の状況を反映している。その後は減少傾向で、1998(平成10)年に小さな山ができた後は、減少の速度がさらに加速している。

2020年の刑法犯検挙・補導人員は3万2063人で過去最少、最も多かった1983年の10分の1だ。これは少子化という人口変化では到底説明できない。非行統計の上では、今の子どもは随分おとなしく見える。インターネット上での誹謗中傷(いじめ)というように、悪事をする場が変わっていることにも注意が要るが、警察統計で見る限り、少年の非行は大きく減っているのは明らかだ。

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