最新記事

ウクライナ戦争

苦境プーチンの数少ない味方...イランはなぜ「かつての仇敵」ロシアを助けるのか?

Iran Is Now at War With Ukraine

2022年11月9日(水)18時07分
ジョン・ハーディ、ベーナム・ベン・タレブー(ともに米保守系シンクタンク「民主主義防衛財団」)

欧米はイラン核合意の復活を断念する?

もちろんイランとロシアの連携強化によって、イスラエルやアラブ諸国のロシアに対する見方がすぐに変わるわけではない。イスラエルはいまだに、ウクライナへの防空システム供与に乗り気ではない。アラブ首長国連邦も、欧米の制裁を回避するため自国に集まってくるロシアマネーの取り締まりに積極的ではないようだ。

だがロシアがイランに最新鋭兵器の売却を始めれば、これらの国々も態度を変える可能性がある(ロシアがイランへの武器売却を渋ってきた理由の一部もここにある)。

同時にアメリカは、長年にわたりイランの無人機やミサイルの脅威を間近に感じてきたイスラエルやアラブ諸国が、イランに対抗する上で必要な軍事力と支援を確保できるようにすべきだ。アラブとイスラエルの安全保障協力を奨励・促進するための取り組みも、改めて強化すべきだろう。

中東の同盟国への支援を強めれば、イランに対抗する上での助けになるだけではなく、中東の同盟国がロシアに関するアメリカの要請をこれまで以上に受け入れるようになるかもしれない。

最後に、ウクライナにおけるイランの行動は米欧にとって、15年のイラン核合意の復活を断念させる大きな理由にもなる。

この核合意は、イランの核兵器開発の野望を封じ込めることができないだけでなく、民間の核開発計画や制裁回避においてロシアとイランの協力をいっそう可能にする。さらにイランに対し、ロシアやその他の国々からの兵器調達に必要な資金を提供するものになってしまうのだ。

From Foreign Policy Magazine

ニューズウィーク日本版 大森元貴「言葉の力」
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年7月15日号(7月8日発売)は「大森元貴『言葉の力』」特集。[ロングインタビュー]時代を映すアーティスト・大森元貴/[特別寄稿]羽生結弦がつづる「私はこの歌に救われた」


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

EU、中国との気候共同行動宣言への署名を保留=FT

ビジネス

中国人民銀の金準備、6月は8カ月連続増

ワールド

中国、農村労働者の再教育計画発表 家事サービス分野

ビジネス

ユーロ圏投資家心理、予想以上に改善 約3年ぶり高水
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    アリ駆除用の「毒餌」に、アリが意外な方法で「反抗」...意図的? 現場写真が「賢い」と話題に
  • 2
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」だった...異臭の正体にネット衝撃
  • 3
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に...「曾祖母エリザベス女王の生き写し」
  • 4
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚…
  • 5
    コンプレックスだった「鼻」の整形手術を受けた女性…
  • 6
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 7
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 8
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコ…
  • 9
    ギネスが大流行? エールとラガーの格差って? 知…
  • 10
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 1
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 2
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコに1400万人が注目
  • 3
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸せ映像に「それどころじゃない光景」が映り込んでしまう
  • 4
    【クイズ】「宗教を捨てる人」が最も多い宗教はどれ?
  • 5
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 6
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 7
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚…
  • 8
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」…
  • 9
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 10
    普通に頼んだのに...マクドナルドから渡された「とん…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 4
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 5
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 6
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 7
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 8
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 9
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 10
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中