アメリカも警戒する、イスラエル人技術者への中国からのスカウトメールとは?

BEIJING’S BIG BET

2022年10月28日(金)12時56分
ディディ・キルステン・タトロブ(ドイツ外交政策評議会元研究員)

220830p18_CNA_04.jpg

アメリカのドローン技術などが、イスラエルを通じて中国に渡る懸念がある AVICHAI MORAG/GETTY IMAGES

だが将来にわたっての勢力図を考えれば、インフラよりハイテク分野のほうが重要だ。今年5月までの20年間に両国が合意した技術投資案件507件のうち、492件がIT(情報技術)、通信、クリーン・農業技術、ロボット工学などの分野だった。

近年はイスラエルがアメリカの懸念を忖度して全体的に件数を減らしているものの、21年から22年5月までの44件中43件がハイテクと、その比率は依然として高いままだ。

この比率の高さはイギリスなど他国を上回る。イギリスでもハイテク分野では中国からの投資が年々増加しており、報道機関などの推定によると過去10年間で全体の約40%に達している(公式の統計はない)。

そこでイギリス政府は情報インフラやAI、ロボット、そしてエネルギーと運輸部門など17の「センシティブな分野」の買収事案について、国家安全保障を理由とする精査・介入を可能にした。

イスラエルにも、買収・資本提携事案を精査する仕組みがある。アメリカ政府の圧力で20年にできたもので、財務省が管轄している。だが、ハイテク部門は対象外だ。なぜか。国家安全保障研究所の中国専門家ガリア・ラビに言わせると、「イスラエルのハイテク産業は民間部門のため、政府は介入を望んでいない」からだ。

「最近のアメリカ人は、市場が自由になりすぎたと考え始めたようだが、それでもアメリカのハイテク企業は依然として中国とビジネスをしている。(イスラエルの企業に)中国と付き合うなとは言いにくい」とラビは言う。

防衛技術の「移転」を恐れる

アメリカがとりわけ懸念するのは、中国がイスラエルの軍事的ノウハウに触れることだ。過去に実例がある。1990年代、中国はイスラエルの無人機「ハーピー」を購入し、03年に改修を求めた。このときイスラエル側は応じなかった。アメリカからの圧力があったからだ。

中国が防衛関連の技術を盗もうとしており、「時には成功を収めている」ことは、イスラエルの安全保障担当者も(非公式にだが)認めている。

イスラエル国防省で安全保障局長を務めたニル・ベン・モシェは今年2月、「中国の情報機関にとってイスラエルとアメリカの複雑な関係の仕組みが相当な関心事となっている」可能性があると、イスラエルの安全保障専門サイトiHLSに遠回しな表現で書いている。

「その対象にはイスラエルの兵器システムのうち、アメリカと協力して開発した、または米国製のものが含まれる」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ECB、政策調整でためらいや先回りはせず=レーン専

ワールド

ロシア、経済スパイ理由に外交官追放 英外務省反発

ワールド

高市首相、赤沢氏を重要物資安定確保担当相に任命 対

ワールド

スペイン、米軍機の領空通過を拒否 対イラン攻撃で
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:BTS再始動
特集:BTS再始動
2026年3月31日号(3/24発売)

3年9カ月の空白を経て完全体でカムバック。世界が注目する「BTS2.0」の幕開け

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「水に流す」日本と「記憶する」韓国...気候と地理が育んだ「国民意識の違い」とは?
  • 2
    記憶を定着させるのに年齢は関係ない...記憶の定着度を決める重要な要素とは?
  • 3
    ビートルズ解散後の波乱...「70年代のポール・マッカートニー」を再評価する傑作映画『マン・オン・ザ・ラン』
  • 4
    ロシア経済を支える重要な港、ウクライナのものと思…
  • 5
    オランウータンに「15分間ロックオン」された女性のS…
  • 6
    【銘柄】東京電力にNTT、JT...物価高とイラン情勢に…
  • 7
    ヒドラのように生き延びる...イランを支配する「革命…
  • 8
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反…
  • 9
    映画『8番出口』はアメリカでどう受け止められた?..…
  • 10
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅…
  • 1
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反対署名...「歓迎してない」の声広がる
  • 2
    「水に流す」日本と「記憶する」韓国...気候と地理が育んだ「国民意識の違い」とは?
  • 3
    三笠宮彬子さまも出席...「銀河の夢か、現実逃避か」モナコ舞踏会に見る富と慈善
  • 4
    レストラン店内で配膳ロボットが「制御不能」に...店…
  • 5
    中国の公衆衛生レベルはアメリカ並み...「ほぼ国民皆…
  • 6
    記憶を定着させるのに年齢は関係ない...記憶の定着度…
  • 7
    中国最大の海運会社COSCOがペルシャ湾輸送を再開──緊…
  • 8
    イランは空爆により核・ミサイル製造能力を「喪失」…
  • 9
    映画『8番出口』はアメリカでどう受け止められた?..…
  • 10
    作者が「投げ出した」? 『チェンソーマン』の最終…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 6
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 7
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 8
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 9
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 10
    縫いぐるみが相棒、孤独なサル「パンチくん」がバズ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中