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台湾有事

ロシア旗艦「モスクワ号」撃沈にいちばん動揺したのは、中国軍?──空母と台湾有事

The Moskva’s Lessons

2022年10月27日(木)14時51分
アレキサンダー・ウーリー(ジャーナリスト、元英国海軍将校)

「(建造ペースの)バランスが偏っていて、非常に高性能なプラットフォームだけを、それも少数しか造れない場合、敵にとって何を標的にするかという問題は非常に単純になる」と、元米海軍大佐のジェフリー・ケアーズは言う。

「(中国海軍が)狙い撃つかもしれない(米軍の)標的は全て、命中させる価値があるということだ」

さらに差し迫った問題は、ミサイルを被弾した場合にその艦が戦闘を続けられる(もしくはすぐに修理して前線に戻れる)かどうかということだ。

短期間の紛争であれば、たとえ致命的な打撃を受けていなくとも、ミサイルの被弾によって艦上機を使った作戦が中断されたり、しばらく空母が前線から退かざるを得なくなったりすれば、沈没させたのと同じくらい効果を上げたといえる。

一方で中国が空母を大きいばかりで時代遅れの船だと考えていないことは、急ピッチの建造計画を見ても明らかだ。

確かに空母には、見えを張るための手段という要素がある。中年の危機真っただ中の人がポルシェを買って見せつけようとするようなものだ。

だが中国海軍があれだけリソースを注ぎ込んでいるところを見ると、空母のことを完全に時代遅れだとか、どうしようもなく弱いとか考えているはずはない。

今年6月、中国海軍は3隻目の空母「福建」を進水させた。勾配で航空機を発進させる従来のスキージャンプ方式ではなく、カタパルト(射出機)を初めて採用している。

アメリカのシンクタンク、戦略予算研究センターは先頃、中国は今後10年間にさらに3隻の空母を建造する予算的余裕があるとの推計を発表した。

巨艦主義の全盛期は過ぎたかもしれない。が、まだまだ空母は時代遅れにはなっていない。

From Foreign Policy Magazine

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