最新記事

ロシア

HIV患者や精神病者まで動員、ロシア兵員不足の窮状

Russia Resorts to Recruiting Prisoners With Infectious Diseases: Ukraine

2022年10月27日(木)09時30分
イザベル・ファン・ブリューゲン

モスクワの病院に負傷兵を見舞ったプーチン(後ろはショイグ国防長官)(5月25日) Sputnik/Mikhail Metzel/REUTERS

<兵員不足はどこまで深刻なのか。ワグネル・リクルート最前線の惨状>

ロシア軍が兵員不足を補うために囚人を動員していることは知られている。だがウクライナの軍事情報機関によれば、単なる囚人だけでなく、感染症に罹った囚人も動員しているという。

ロシア政府と関係が深い同国の民間軍事会社ワグネル・グループはこれまでも、恩赦や一時金と引き換えに、受刑者を兵士として採用していると報道されてきたが、ウクライナ国防省情報総局の報道機関は10月25日、ワグネル・グループが、HIVやC型肝炎などの感染症を患う囚人も大量に採用し始めていると伝えた。

「このやり方は広く行われている。例えばある流刑地では、HIVやC型肝炎の診断が確定している100人以上の囚人が、ワグネル・グループに『動員』されている」と情報総局は述べている。

ワグネルは患者をほかの兵士と区別するため、HIVに感染している囚人は赤い腕輪、肝炎の囚人は白い腕輪を着けられ、負傷しても医者は治療を拒否することがある、と情報総局は伝える。

【画像】感染症の兵士を区別するためのリストバンド

ウクライナ軍は実際に、こうした感染症を患うロシア兵たちを捕らえている、と情報総局は述べている。

また囚人擁護団体ロシア・ビハインド・バーズを率いるオルガ・ロマノヴァによれば、ワグネル・グループは、ロシアの遠隔地にある流刑地でも兵士を採用しているという。

ロマノヴァは10月後半、ロシアの独立系報道機関Agentstvoの取材に対し、ワグネル・グループは1週間で5000人の囚人を集めており、そのほとんどが、ロシアのヨーロッパ地域とアジア地域を隔てるウラル山脈の東側にある流刑地の囚人だと説明している。

ロマノヴァによれば、ワグネル・グループはこれまで、ロシアのヨーロッパ側のみに兵士採用担当者を派遣していたが、現在は、ウラル山脈の東側のほか、ソビエト連邦の一部だったベラルーシやタジキスタンなどからの兵士採用も進めようとしているという。

また、ロシアはサンクトペテルブルクの精神科病院でもウクライナ戦争の義勇兵を募集しており、金銭的なインセンティブを用意して参戦を促している。

9月には、サンクトペテルブルクにある精神神経科第2診療所のウェブサイトに、義勇兵隊「クロンシュタット」、「ネヴァ」、「パヴロフスク」の新兵を募集するポスターが掲載された。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

26年の最大のテールリスクはAI巡るサプライズ、ヘ

ワールド

インドネシアとの貿易協定、崩壊の危機と米高官 「約

ビジネス

米エクソン、30年までに250億ドル増益目標 50

ワールド

アフリカとの貿易イニシアチブ、南アは「異なる扱い」
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【クイズ】アジアで唯一...「世界の観光都市ランキング」でトップ5に入ったのはどこ?
  • 3
    トランプの面目丸つぶれ...タイ・カンボジアで戦線拡大、そもそもの「停戦合意」の効果にも疑問符
  • 4
    中国の著名エコノミストが警告、過度の景気刺激が「…
  • 5
    「韓国のアマゾン」クーパン、国民の6割相当の大規模情…
  • 6
    死者は900人超、被災者は数百万人...アジア各地を襲…
  • 7
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 10
    イギリスは「監視」、日本は「記録」...防犯カメラの…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 6
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 7
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 8
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 9
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 10
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中