最新記事

災害

大洪水に襲われたパキスタン、復興に苦難 家も仕事も押し流され

2022年9月7日(水)16時59分

国際通貨基金(IMF)は先週、資金繰りに苦しむパキスタンに対する11億ドルの支援に合意した。

しかし特に農民の間では、十分な支援が受けられないのではないかという不安が広がっている。畑は荒れ果て、作付け再開前に土地の修復作業が必要だとの声もある。

チャルサダ郊外の村に住むシェル・アラムさん(47)は8月26日に自分の土地が洪水に見舞われ、サトウキビの収穫ができなくなった。

種と肥料を買うための借金を返済するため、すでに450ドルを借りているが、さらに農地復旧のために230ドルの融資を求めている。

5人の子どもを持つアラムさんは、日々の暮らしを支えるため、チャルサダの民間駐車場で仕事を見つけた。洪水で被害を受けた農作物は家畜の餌にしかならない。

自宅前の木の下に座り込み、「どうやって生き延びたらいいのか分からない」と不安を吐露した。

国連人道問題調整事務所によると、パキスタンは洪水で約200万エーカーの作物が被害を受け、経済に影響が及ぶだけでなく、食糧安全保障も危険にさらされる可能性がある。

バルチスタン州のブルチャさんによると、果物、野菜、肉は供給が不足して価格が高騰し、特に貧しい人たちが苦しんでいる。

ブルチャさんの地域では、洪水によって頼みの井戸が汚染され、健康被害をもたらす恐れがあるという。「人々は苦しみ、多くの人々が亡くなるだろう」

無視された警報

洪水に見舞われた人々の多くは、十分な警告を受けていなかったり、数カ月に及ぶ豪雨で警報が繰り返し発令されたりしたため、警戒感が低下したという。

アラムさんの村は8月下旬の洪水の際に政府から正式な警報を受けていなかったが、近隣の村から警報が伝えられた。ソーシャルメディアでも警報が流れたため、アラムさんの村は約3時間で家畜や物資を安全に移動させることができた。

カイバル・パクトゥンクワ州の災害当局者は、州内の5つの河川と他の2カ所に設置された監視設備が早期警報に役立ったと説明。警報により18万人がチャルサダ地域から避難したという。

(Imran Mukhtar記者)

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2022トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米FRB利下げは9月、従来予想の7月から後ずれ=M

ワールド

ボーイング新型宇宙船打ち上げ、17日以降に延期 エ

ビジネス

トヨタの今期、2割の営業減益予想 市場予想下回る

ビジネス

ドイツの輸出、今年は停滞の見通し=商工会議所調査
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    「自然は残酷だ...」動物園でクマがカモの親子を捕食...止めようと叫ぶ子どもたち

  • 3

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 4

    「真の脅威」は中国の大きすぎる「その野心」

  • 5

    いま買うべきは日本株か、アメリカ株か? 4つの「グ…

  • 6

    デモを強制排除した米名門コロンビア大学の無分別...…

  • 7

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 8

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 9

    中国軍機がオーストラリア軍ヘリを妨害 豪国防相「…

  • 10

    イギリスの不法入国者「ルワンダ強制移送計画」に非…

  • 1

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 2

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 3

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 4

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 5

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 6

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 7

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 8

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 9

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 10

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中