最新記事

ウクライナ情勢

ウクライナ4州の住民投票終了へ ロシア動員抗議続く、出国制限も

2022年9月27日(火)10時02分
住民投票を知らせる「未来」と書かれた横断幕の前を通る老人

ウクライナ東南部4州の親ロシア派支配地域で実施されているロシアへの編入を問う住民投票が27日終了する。ロシアではウクライナ侵攻の劣勢打開を狙ってプーチン大統領が出した部分動員令に反発する動きが続き、当局が出国制限に乗り出すとの報道も出ている。写真は、住民投票を知らせる「未来」と書かれた横断幕。9月26日、ザポロジエ州メリトポリで撮影(2022年 ロイター/Alexander Ermochenko)

ウクライナ東南部4州の親ロシア派支配地域で実施されているロシアへの編入を問う住民投票が27日終了する。ロシアではウクライナ侵攻の劣勢打開を狙ってプーチン大統領が出した部分動員令に反発する動きが続き、当局が出国制限に乗り出すとの報道も出ている。

住民投票は23日から東部ドネツク州とルガンスク州、南部へルソン州とザポロジエ州の一部地域で行われており、西側諸国は偽りの住民投票だとして結果を認めない考えを表明している。

ロシアでは、動員令により約30万人の予備役が招集される見通しとなったことを受け、侵攻が始まって以来初めて継続的な抗議活動が繰り広げられている。監視団体の推計によると、これまでに少なくとも2000人が逮捕された。

出国も相次いでおり、海外便の航空券は売り切れ、国境検問所では車の渋滞が起きている。旧ソ連圏でロシア国民が査証(ビザ)なしで入国できる親欧米派の隣国ジョージア(旧グルジア)への唯一の陸続きの国境では、48時間の行列ができたと報じられている。

ロシアのペスコフ大統領報道官は国境を閉鎖する可能性について問われ「この件に関しては何も知らない。現時点で何も決定していない」と述べた。

国外に拠点を置くロシアの独立系メディア「メドゥーザ」と「ノーバヤ・ガゼータ」は、いずれも関係者の話として、当局が男性の出国を禁止する計画を進めていると報じた。

一方、ウクライナのゼレンスキー大統領は26日、住民投票が行われている地域の1つ、ドネツク州の軍事情勢が「とりわけ困難な状況」という認識を示した。

「われわれは敵の活動を封じ込めるため、あらゆる手を尽くしている。(ドネツク、ルガンスク両州の)ドンバス地域は現時点でウクライナの最優先事項だ。なぜなら占領者の第一の目標だからだ」と語った。

ルガンスク州のガイダイ知事は住民投票の様子について、治安当局に付き添われた親ロシア派の職員が投票箱を持って家を一軒一軒訪れ、要求された通り投票しなかった住民の名前を書き留めていると話した。

セルビアやカザフスタンといったロシアの昔からの同盟国でさえ、編入に関する住民投票を認めないとしている。

ロシア政府は、投票は任意であり、投票率も高いと主張。2014年にクリミア半島で住民投票を実施した際には、住民の97%が併合に賛成したと宣言した。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2022トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

豪CPI、第1四半期は前期比+1.0% 予想上回る

ビジネス

米ロッキード、1─3月業績が予想超え 地政学リスク

ワールド

原油先物は上昇、米原油在庫が予想外に減少

ワールド

ノルウェー、UNRWA支援再開呼びかけ 奇襲関与証
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 2

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の「爆弾発言」が怖すぎる

  • 3

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴らす「おばけタンパク質」の正体とは?

  • 4

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 5

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 6

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 7

    「なんという爆発...」ウクライナの大規模ドローン攻…

  • 8

    イランのイスラエル攻撃でアラブ諸国がまさかのイス…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 8

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    ダイヤモンドバックスの試合中、自席の前を横切る子…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中