最新記事

インド

集団で強姦と殺人を犯した11人が釈放...英雄のような歓迎を受け、批判が殺到

2022年8月19日(金)18時25分
アンジャラ・ファラハト
釈放に抗議する人々

11人の釈放に抗議する人々(2022年8月) Adnan Abidi-Reuters

<イスラム教徒に対する暴動の中で妊婦が集団で暴行を受け、家族が殺害された事件の犯人に恩赦。ヒンドゥー民族主義とのかかわりも指摘される>

2002年に妊婦を集団でレイプし、3歳の娘を含む家族7人を殺害した罪で有罪判決を受けた11人の男に、インドの裁判所が恩赦を与えた。これによって11人の受刑者が釈放されたことで、この事件が再び世間を騒がせている。8月15日、刑務所から出てきた11人を待っていたのは、英雄を迎えるような歓迎だった。

■【動画】英雄のように歓迎を受ける11人の受刑者たち

11人は、2002年にインド西部のグジャラート州で起きた大規模な暴動において、当時21歳のイスラム教徒ビルキス・バノさんを集団レイプし、その家族を殺害した罪で、2008年に終身刑の有罪判決を受けていた。ロイターによれば、バノさんは当時、妊娠5カ月だった。

ソーシャルメディアで拡散された動画には、釈放された11人が、親族からお菓子を配られたり、敬意の印として足に触れられたりしている様子が映っている。

2002年2月、ヒンドゥー教の巡礼者59人を乗せた列車が炎上し、乗客全員が死亡するという事件が起きた後、イスラム教徒の迫害が始まった。事件の報復として、グジャラート州だけで2000人近くが刃物、銃、炎によって命を奪われた。犠牲者の大部分がイスラム教徒だった。

騒動のさなかにあった3月3日、畑に避難していたバノさんの家族が、鎌や剣、棒を振り回す20~30人の集団に襲われた。一連の恐ろしい暴動のなかでも、バノさんに対する集団レイプは、インドの少数派であるイスラム教徒たちの神経を逆なでする出来事だった。

被害者は「正義への信頼を揺るがされている」

2022年8月15日の夜、レイプ犯たちが釈放されたという事実を受け入れることができず、バノさんは言葉を失った。

バノさんの夫であるヤクブ・ラスールさんはインディアン・エクスプレスの取材に対し、こう語った。「私たちの長年にわたる戦いが、一瞬にして終わりを迎えた。裁判所によって下された終身刑の判決が、このような形で短縮されるなんて......。私たちは、『恩赦』という言葉を聞いたことすらなかった。そのような制度が存在することすら知らなかった」

バノさんは、声明の中で次のように述べている。「女性のための正義がなぜ、このような終わりを迎えるのか? 私は、この国の最高裁判所を信頼していた。私は裁判制度を信頼し、トラウマとともに生きることをゆっくり学んでいた。これらの受刑者が釈放されたことで、私は心の安らぎを奪われ、正義に対する信頼を揺るがされている」

バノさんはさらに、「これほど重大で不当な決定を下す前に、誰も、私の安全や幸福について尋ねなかった......。恐れることなく平和に生きる権利を返してほしい。家族と私の安全を守ってほしい」と語り、グジャラート州政府に決定の撤回を求めた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イラン、スペインは「国際法順守」 ホルムズ海峡巡る

ワールド

欧州各国とカナダの防衛費、25年に20%増=NAT

ワールド

イスラエル、革命防衛隊のタングシリ海軍司令官を殺害

ワールド

マレーシア首相、イラン・エジプト首脳らと会談 ホル
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:BTS再始動
特集:BTS再始動
2026年3月31日号(3/24発売)

3年9カ月の空白を経て完全体でカムバック。世界が注目する「BTS2.0」の幕開け

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    作者が「投げ出した」? 『チェンソーマン』の最終回に世界中から批判殺到【ネタバレ注意】
  • 2
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反対署名...「歓迎してない」の声広がる
  • 3
    意外と「プリンス枠」が空いていて...山崎育三郎が「日本産ミュージカルの夢」に賭ける理由【独占インタビュー】
  • 4
    デンマーク王妃「帰郷」に沸騰...豪州訪問で浮かび上…
  • 5
    まずサイバー軍が防空網をたたく
  • 6
    トランプが誤算? イラン攻撃延期の舞台裏、湾岸諸国…
  • 7
    三笠宮彬子さまも出席...「銀河の夢か、現実逃避か」…
  • 8
    100年の時を経て「週40時間労働」が再び労働運動の争…
  • 9
    親の遺産はもう当てにできない? ベビーブーム世代…
  • 10
    「予想よりも酷い...」ドラマ版『ハリー・ポッター』…
  • 1
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公開...母としての素顔に反響
  • 2
    【銘柄】「三菱商事」の株価に高まる期待...ホルムズ海峡封鎖と資源価格高騰が業績を押し上げ
  • 3
    「マツダ・日産・スバル」が大ピンチ?...オーストラリアの「NVES規制」をトヨタが切り抜けられた理由
  • 4
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 5
    レストラン店内で配膳ロボットが「制御不能」に...店…
  • 6
    三笠宮彬子さまも出席...「銀河の夢か、現実逃避か」…
  • 7
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する…
  • 8
    中国の公衆衛生レベルはアメリカ並み...「ほぼ国民皆…
  • 9
    イランは空爆により核・ミサイル製造能力を「喪失」…
  • 10
    韓国製ミサイル天弓-II、イラン戦争で96%迎撃の衝撃 …
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 6
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 7
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 8
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 9
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 10
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中