最新記事

ウクライナ

兵士の葬儀中、ウクライナ人司祭に「十字架」で殴りかかったロシア人司祭の映像

Russian Priest Beats Ukrainian Priest With Cross at Soldier's Funeral

2022年7月30日(土)17時02分
キャサリン・ファン
十字架イメージ

JanPietruszka-iStock

<ウクライナ正教会の司祭が、プーチンとロシア正教会について語った内容に腹を立てたことが原因だったという>

ウクライナ人兵士の葬儀がしめやかに執り行われているところに、ロシア人の司祭が乱入し、ウクライナ正教会の司祭を十字架で殴りつけるという「事件」が起きた。ウクライナ人司祭が葬儀の場で、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領について語っていた言葉に、腹を立てたことが原因だった。

■【動画】十字架を手にウクライナ司祭に殴りかかるロシア司祭

7月22日にウクライナ中部の都市ビンニツァで執り行われたオレクサンドル・ジニビーの葬儀のもようを撮影した動画には、ウクライナ人司祭のアナトリー・ダドコが告別の辞を述べていたところに、ロシア人の司祭(地元活動家のセルヒー・ティムコフによれば、ミハイロ・バシリュクという名前)が駆け寄ってくる様子が捉えられていた。

ウクライナ正教会の司祭ダドコは、ロシアのプーチン大統領がウクライナに軍事侵攻を行った理由のひとつは、ウクライナにおけるロシア正教会の信者たちを守ることだったと発言。さらにロシア正教会はこの国への侵略者を支援しているとし、これを聞いたバシリュクが葬儀に乱入してきたと報じられている。

動画には、バシリュクがダドコの首にかかっていた十字架を取り上げようとした後、自分の手に持っていた十字架で彼を殴りつける様子が映っている。現場にいた複数の軍人が止めに入ってバシリュクを引き離し、葬儀は続けられた。地元メディアによれば、ジニビーはウクライナ南部のミコライウに近いビンニツァで死亡した兵士だった。

警察が刑事事件として捜査を開始

ティムコフは今回の騒動の詳細をフェイスブックに投稿し、殴られたダドコは軽傷を負ったと明らかにした。

「今回の一件は、傲慢さという点であらゆる一線を越えていると思う」と彼は書き込み、さらにこう続けた。「法執行当局には争いが起きた場合に、どのような集まりであっても秩序が守られるよう、一層の取り組みをお願いしたい」

ウクライナのメディア「Vinbazar.com」によれば、ビンニツァの警察は今回の一件について通報を受けており、刑事事件として捜査が開始されている。

ウクライナのミハイロ・ポドリャク大統領補佐官は6月にBBCに対して、1日あたり100人から200人のウクライナ兵がロシアとの戦闘で命を落としていると述べていた。その1週間前にはウォロディミル・ゼレンスキー大統領が、1日あたりの兵士の犠牲者は60人から100人近くだと述べていた。

一方のロシア軍の犠牲について米ホワイトハウスは7月27日、ウクライナでの戦闘で死亡または負傷したロシア兵の数は7万5000人超との推定を示した。ロシア軍が2月の侵攻開始時にウクライナに派遣した兵士の、約半分にのぼる人数だ。侵攻開始に向けて、ロシアはウクライナとの国境地帯に15万人の兵士を集結させたと報じられていた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

鉱物資源協定、ウクライナは米支援に国富削るとメドベ

ワールド

米、中国に関税交渉を打診 国営メディア報道

ワールド

英4月製造業PMI改定値は45.4、米関税懸念で輸

ビジネス

日銀、政策金利を現状維持:識者はこうみる
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 5
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 6
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 9
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 10
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 7
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 8
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 9
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 10
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中