最新記事

電気自動車

ここまで来たベトナムのEV、アメリカに進出

Vietnamese Automaker VinFast Plants an Electric Foot in the American Market

2022年7月4日(月)12時45分
ジェイク・リンゲマン

ノースカロライナ州に組み立て工場を建設する合意をしたビンファスト

<ベトナム初の世界的自動車メーカーが、グローバルの存在感を急拡大させている。内燃エンジン搭載車両の生産を年内に停止し、電動自動車に専念。最新の技術とサービスで米市場での成功を目指す>

自動車業界は排他的な集団で、滅多に新参者の参入を許さない。テスラやリビアンは例外だ。とくに電気自動車(EV)市場への進出を果たすのは多くの場合、「ポールスター」のように定評ある自動車メーカーの傘下にあるブランドで、イタリアや中国のメーカーはこれまでのところ、同市場に参入することができていない。

この狭き門に挑もうとしているのが、ベトナムの自動車メーカー「ビンファスト」だ。

ビンファストは、ベトナムの複合企業最大手「ビングループ」の子会社として2017年に創設された。親会社のビングループは、実業家のファム・ニャット・ブオンが1993年に創業。最初はウクライナで即席麺の製造・販売事業を展開し、2000年にベトナムに帰国すると事業を拡大していった。

ビングループ傘下には自動車メーカー「ビンファスト」のほかにも、スマートフォンを扱っていた「ビンスマート」、東南アジア最大の野生生物保護公園「ビンパール」、テーマパークの「ビンワンダーズ」や薬局チェーンの「ビンファ」などがある。

vlineup.jpg

若いEV市場にチャンスを見出した

世界的なEVコンサルティング企業「ゾゾ・ゴー」のマイケル・ダン最高経営責任者(CEO)は本誌の取材に対し、(ビンファストが米市場参入を目指すのには3つの要因があると語った。「1つ目はビンファストが市場にチャンスを見出したことだ。EV市場はとても若く、ゲームは始まったばかりだ」

「2つ目は、ビンファストはベトナム国内では英雄であり、国としてのプライドがあること。同社はベトナム政府からも全面的なサポートを得ている。そして3つ目は、中国とは異なり、米政府からも全面的なサポートを得るチャンスがあることだ」

ビンファストの社名は、同ブランドが重点を置く「ベトナム」「スタイル」「安全」「創造性」「パイオニア」を意味するベトナム語の単語を組み合わせたものだ。

米市場への参入に向けた同社の第一歩が、2021年のロサンゼルス・モーターショーだった。ここで中型の2列シートSUV「VF8」(価格は4万1000ドル~)と、VF8よりも大きいが同じく中型の3列シートSUV「VF8」(価格は約5万6000ドル~)を発表した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ガザ支援船、イスラエル軍が残る1隻も拿捕

ビジネス

世界食糧価格指数、9月は下落 砂糖や乳製品が下落

ワールド

ドローン目撃で一時閉鎖、独ミュンヘン空港 州首相「

ビジネス

中銀、予期せぬ事態に備える必要=NY連銀総裁
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:2025年の大谷翔平 二刀流の奇跡
特集:2025年の大谷翔平 二刀流の奇跡
2025年10月 7日号(9/30発売)

投手復帰のシーズンもプレーオフに進出。二刀流の復活劇をアメリカはどう見たか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 2
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最悪」の下落リスク
  • 3
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外な国だった!
  • 4
    「人類の起源」の定説が覆る大発見...100万年前の頭…
  • 5
    MITの地球化学者の研究により「地球初の動物」が判明…
  • 6
    イスラエルのおぞましい野望「ガザ再編」は「1本の論…
  • 7
    女性兵士、花魁、ふんどし男......中国映画「731」が…
  • 8
    「元は恐竜だったのにね...」行動が「完全に人間化」…
  • 9
    1日1000人が「ミリオネア」に...でも豪邸もヨットも…
  • 10
    【クイズ】1位はアメリカ...世界で2番目に「航空機・…
  • 1
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 2
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外な国だった!
  • 3
    トイレの外に「覗き魔」がいる...娘の訴えに家を飛び出した父親が見つけた「犯人の正体」にSNS爆笑
  • 4
    ウクライナにドローンを送り込むのはロシアだけでは…
  • 5
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 6
    iPhone 17は「すぐ傷つく」...世界中で相次ぐ苦情、A…
  • 7
    こんな場面は子連れ客に気をつかうべき! 母親が「怒…
  • 8
    【クイズ】世界で1番「がん」になる人の割合が高い国…
  • 9
    高校アメフトの試合中に「あまりに悪質なプレー」...…
  • 10
    虫刺されに見える? 足首の「謎の灰色の傷」の中から…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 4
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 5
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に.…
  • 6
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 7
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 8
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ…
  • 9
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 10
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中