最新記事

生物

時速100キロ以上、摂氏4400度のプラズマ衝撃波を放つテッポウエビの驚異

2022年7月29日(金)15時30分
松岡由希子

テッポウエビのはさみはプラズマと衝撃波を生成する...... Image credits: Oxford Museum of Natural History

<テッポウエビの巨大なはさみから発生した気泡は、時速100キロ以上の速さで獲物に向けて放出され、銃声よりも大きな約218デシベルの音が1秒程度鳴る。テッポウエビのはさみや殻に関する様々な研究が行われてきた......>

テッポウエビは体長約4センチ、体重25グラムの十脚目テッポウエビ科に属するエビの一種である。体の半分くらいの巨大なはさみ(鉗脚)を持つのが特徴だ。

このはさみは、獲物を撃って無力化する銃のような機能を果たす。はさみの上部を開くと曲がった小さなスペースに水が入り込み、勢いよく閉じると圧力がかかって水が噴射される仕組みだ。これによって発生した気泡は時速100キロ以上の速さで獲物に向けて放出され、銃声よりも大きな約218デシベルの音が1秒程度鳴る。

また、気泡が弾けると、溶岩の温度の約4倍にあたる摂氏4427度の熱も発生する。この熱は狙った獲物にだけ影響を与え、すぐに消散する。

テッポウエビを模倣し、水中でプラズマを生成する手法を考案

このはさみは長い年月をかけて進化したものと考えられている。加アルバータ大学の研究チームがエビ114種について調査した2017年12月の研究論文では、テッポウエビのはさみの進化に約1億5000万年を要したことが示されている。

これまでテッポウエビのはさみに関する様々な研究が行われてきた。米テキサスA&M大学の研究チームが2019年3月に発表した研究論文では、テッポウエビのはさみの動きを模倣し、水中でプラズマを生成する新たな手法が考案されている。

研究チームは、テッポウエビのはさみがプラズマと衝撃波を生成することに着想を得、テッポウエビの脱皮後の殻をもとに実物の5倍の3Dモデルを作成し、物理的形状だけでなく、プラズマを発生させる複雑なメカニズムも再現した。このメカニズムは水の殺菌や掘削など、幅広い分野で応用できる可能性があるという。

衝撃波から自らを防御しているのかを解明

米サウスカロライナ大学の研究チームは、テッポウエビのはさみが放つ衝撃波から自らをどのように防御しているのかを解明し、2022年7月5日、学術雑誌「カレントバイオロジー」で研究論文を発表した。

これによると、眼球を覆うヘルメット状の器官が水を閉じ込めて、衝撃波を受けると小さな穴から水を排出することで衝撃波を弱らせ、爆風に起因する神経外傷を緩和していることが明らかとなっている。

【動画】>>■■【動画】テッポウエビの驚異、摂氏4400度のプラズマ衝撃波を放つ■■

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

米政権、ミネソタ州に捜査官「数百人」追加派遣 女性

ビジネス

米商務省、中国製ドローン規制案を撤回 トランプ氏訪

ビジネス

米政権が刑事訴追警告とパウエル氏、利下げ圧力強化の

ワールド

イラン抗議デモで死者500人超、トランプ氏「強力な
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:AI兵士の新しい戦争
特集:AI兵士の新しい戦争
2026年1月13日号(1/ 6発売)

ヒューマノイド・ロボット「ファントムMK1」がアメリカの戦場と戦争をこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 3
    中国が投稿したアメリカをラップで風刺するAI動画をネット民冷笑...「本当に痛々しい」
  • 4
    Netflix『ストレンジャー・シングス』最終シーズンへ…
  • 5
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 8
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
  • 9
    飛行機内で「マナー最悪」の乗客を撮影...SNS投稿が…
  • 10
    決死の嘘が救ったクリムトの肖像画 ──ナチスの迫害を…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 3
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 4
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 5
    中国が投稿したアメリカをラップで風刺するAI動画を…
  • 6
    次々に船に降り立つ兵士たち...米南方軍が「影の船団…
  • 7
    Netflix『ストレンジャー・シングス』最終シーズンへ…
  • 8
    ベネズエラの二の舞を恐れイランの最高指導者ハメネ…
  • 9
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
  • 10
    「グリーンランドにはロシアと中国の船がうじゃうじ…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 3
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 4
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 5
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 6
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 7
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 8
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 9
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 10
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中