最新記事

沖縄の論点

「島唄」が僕の人生を導いてくれた──宮沢和史(元THE BOOM)が語る沖縄と音楽

FOR FUTURE GENERATIONS

2022年6月25日(土)16時00分
宮沢和史(ミュージシャン)
三線を弾く宮沢

「島唄」をリリースした当時、沖縄と本土の間にはまだ見えない壁があった MORIAKI KISE

<凄惨な地上戦があったこの島でなぜこれほど美しい芸能を磨けるのか、その問いを一生かけても解明したい>

本土復帰50年を沖縄の人たちがどう受け止めているか――その答えはその人の立場、考え方によって違うだろう。対談集『沖縄のことを聞かせてください』(双葉社)のために、年齢も生い立ちもさまざまな10人にインタビューしたが、そこで思ったのは皆さんがそれぞれ「ウチナーンチュ(沖縄の人)」とは何か、沖縄とは何か、という命題を抱え、それが仕事や活動の原動力になっていること。

沖縄でも、世代によって育った環境が違うし、アイデンティティーも違う。復帰50周年の記念式典には僕も参加したが、会場の外の抗議デモが聞こえ、反発があることも実感した。それでも、沖縄と本土の橋渡し的な役割をしたいと考えている僕が、レセプションで歌うことができたのはよかったと思っている。

僕は沖縄に来てから沖縄の音楽が好きになったのではなく、そもそも沖縄民謡を好きになって、この音楽をひもといてみたいと沖縄に通うようになった。今でも、その想いは変わらない。これから50年後、100年後も沖縄民謡や古典音楽、組踊(伝統的な歌舞劇)、エイサーといった伝統芸能が発展していってほしいと願って活動している。

「島唄」ヒットで三線の材料が枯渇

三線(さんしん)の材料である琉球黒檀(こくたん)という木は、現在沖縄では枯渇して輸入に頼っている。あるとき三線を作る職人さんから「『島唄』のヒット後の三線ブームで材料が足りなくなって輸入が始まった」と言われ、いい素材がしかるべき人に渡らなくなったのなら植えなくてはいけないと思い、2012年から琉球黒檀を植樹するプロジェクトを始めた。成長するまでには100年を超える時間がかかるが、将来的には植えた木が三線になってほしいという願いを込めて。

また245曲の沖縄民謡を収録したアーカイブ集を作成し、県内の学校や図書館に寄付した。これも将来、子供たちが民謡を習う時のために、楽譜に残せない部分を音声に記録しておこうという思いから。

「島唄」を作ったきっかけは、既にTHE BOOMとしてデビューしていた20代半ばに初めて沖縄を訪れ、そこで沖縄戦の真実を知ったこと。ひめゆり平和祈念資料館の資料などに触れ、県民の4人に1人が亡くなった沖縄戦のことを何も知らない自分がとても恥ずかしかった。

もちろん戦没者は沖縄だけではないが、沖縄戦の戦没者20万柱の上に日本の復興があったと考えざるを得ないし、それがあって日本は短期間にこれほどの先進国になったという事実をもっと本土の人も知らなくてはならない。プロのミュージシャンとして、そのことを歌にして本土の人たちに伝えたかった。とはいえ、ロックバンドが三線を持って歌うのは当時、前例がなかったし、「島唄」は92年にリリースしたアルバムの中の1曲でしかなかった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国こそが「真の脅威」、台湾が中国外相のミュンヘン

ワールド

米中「デカップリング論」に警鐘、中国外相がミュンヘ

ビジネス

ウォルマート決算や経済指標に注目、「AIの負の影響

ワールド

ドバイ港湾DPワールドのトップ辞任、「エプスタイン
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:習近平独裁の未来
特集:習近平独裁の未来
2026年2月17日号(2/10発売)

軍ナンバー2の粛清は強権体制の揺らぎか、「スマート独裁」の強化の始まりか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発される中国のスパイ、今度はギリシャで御用
  • 2
    【銘柄】マイクロソフトの株価が暴落...「AI懸念」でソフトウェア株総崩れの中、投資マネーの新潮流は?
  • 3
    「ヒンメルならそうした」...コスプレイヤーが消火活動する動画に世界中のネット民から賞賛の声
  • 4
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 5
    それで街を歩いて大丈夫? 米モデル、「目のやり場に…
  • 6
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 7
    なぜ「あと1レップ」が筋肉を壊すのか...「高速パワ…
  • 8
    川崎が「次世代都市モデルの世界的ベンチマーク」に─…
  • 9
    【インタビュー】「4回転の神」イリヤ・マリニンが語…
  • 10
    機内の通路を這い回る男性客...閉ざされた空間での「…
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 3
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 4
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 5
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 6
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
  • 7
    ビジネスクラスの乗客が「あり得ないマナー違反」...…
  • 8
    がんは何を食べて生き延びるのか?...「ブドウ糖」の…
  • 9
    【銘柄】マイクロソフトの株価が暴落...「AI懸念」で…
  • 10
    「ヒンメルならそうした」...コスプレイヤーが消火活…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 6
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 7
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 8
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 9
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 10
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中