最新記事

ウクライナ

ウクライナに供与する長距離ロケット「ロシア領内には撃たない」で決着

Ukraine Has Promised U.S. Not to Fire New 50-Mile Range Rockets Into Russia

2022年6月1日(水)17時31分
トム・オコナー

自走式多連装のMLRS(2020年、台湾の演習で) Ann Wang-REUTERS

<アメリカはウクライナに対し、供与を予定している長距離ロケット砲システムは、ウクライナ国内のみで使用し、ロシアの領土への攻撃には使わないことを約束させた>

アメリカはウクライナに射程距離約80キロの最新ロケット砲システムの供与を予定しているが、ウクライナ当局者はそれを国内のロシア軍との戦いにのみ使用し、ロシア領土内への攻撃には使わないと誓ったことを、バイデン政権の高官が明かした。

5月31日、この高官は記者たちに、6月1日に発表予定のウクライナへの新たな総額7億ドルの軍事支援パッケージに、M142高機動ロケット砲システム(HIMARS、ハイマース)が含まれると述べた。射程が約80キロの自走式多連装ロケットで、これまでにアメリカが供与してきたM777榴弾砲の射程25キロよりはるかに長距離の攻撃ができる。

2021年1月にジョージ・バイデンが大統領に就任して以来、ウクライナへの支援は総額50億ドルを超えているが、この高官によれば、今回の支援は「ウクライナが国を守るためにアメリカがこれまで提供していた以上の安全保障上の支援を提供する」というバイデンの計画の一部だという。

「ただし、われわれはウクライナが国境を越えて攻撃することを奨励したり、可能にしたりしているわけではない」と、高官は念を押した。「ロシアを苦しめるためだけに戦争を長引かせようとしているわけではない」

「われわれはウクライナに対し、戦場におけるウクライナ側の戦闘力および現在の戦況に見合うと思われる範囲の能力を提供している」と、この高官は述べた。そのため、米政府としては「より射程が長い兵器」は提供しないという決断を下し、政権側は「そのことをウクライナ側に伝えていた」という。

長距離攻撃も可能

提供された新システムでロシア領土内の標的を攻撃しないことをウクライナ側は明確に約束したのかという記者の質問に対して、バイデン政権の高官は、約束したと答えた。

「ウクライナ側は、ロシアの領内の標的に対してこの新兵器を使わないという確約を与えた。当局者による保証に、満足している」

アメリカはこれまでウクライナ軍に対し、武器や訓練など数十億ドル相当の支援を行ってきた。とくにロシアの軍事侵攻後、支援額は大幅に増えた。ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、ロシアの侵攻を食い止めるためにさらなる支援を繰り返し要請している。

ウクライナ当局が米軍に提供を要請しているのは、HIMARSおよびM270多連装ロケットシステム(MLRS)だ。両システムとも、使い方によっては何百キロも離れた標的を攻撃することができる。

アメリカがウクライナに対して高度ロケットシステムの提供を計画していることがワシントンポストやCNNなど報道機関によって報じられると、バイデンは5月30日、ホワイトハウスの外で記者会見を行い、「ロシア領内に届くM270をウクライナに送るつもりはない」と述べた。

その直後、ホワイトハウスはこの発言を再検討したらしく、別の高官は「MLRSは検討中だが、長距離攻撃能力を持つ兵器は検討の対象になっていない」と語っていた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、イラン協議「2日以内」にパキスタンで再

ワールド

印首相、トランプ氏と電話会談 ホルムズ海峡開放の重

ビジネス

米財務長官、FRBに利下げ改めて要請 「コアインフ

ビジネス

米PPI、3月は+0.5% 予想下回るもエネ高騰で
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:台湾有事の新シナリオ
特集:台湾有事の新シナリオ
2026年4月21日号(4/14発売)

地域紛争の「大前提」を変えた米・イラン戦争が台湾侵攻の展開に及ぼす影響をシミュレーション

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    米軍の海上封鎖に中国が抗議、中国タンカーとの衝突リスク高まる
  • 2
    高さ330メートルの絶景と恐怖 「世界一高い屋外エレベーター」とは
  • 3
    停戦合意後もレバノン猛攻を続けるイスラエル、「国防軍は崩壊寸前」
  • 4
    日本は「イノベーションのやり方」を忘れた...ホンダ…
  • 5
    中国がイラン戦争一時停戦の裏で大笑い...一時停戦に…
  • 6
    【銘柄】イラン情勢で「任天堂」が急落 不確実な相…
  • 7
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文…
  • 8
    トランプを批判する「アメリカ出身のローマ教皇」レ…
  • 9
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 10
    「地獄を見る」のは米国か──イラン地上侵攻なら革命…
  • 1
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文章」...歴史を塗り替えかねない、その内容とは?
  • 2
    バリ島沖の要衝で「中国製水中ドローン」が回収される...潜水艦の重要ルートで一体何をしていた?
  • 3
    韓国、生理用品無償支給を7月から開始 靴の中敷きで代用した少女たちから10年、アジア初の普遍的支援へ
  • 4
    停戦合意後もレバノン猛攻を続けるイスラエル、「国…
  • 5
    撃墜された米国機から財布やID回収か、イラン側が拡…
  • 6
    ポケモンで遊ぶと脳に「専用の領域」ができる? ポ…
  • 7
    中国がイラン戦争一時停戦の裏で大笑い...一時停戦に…
  • 8
    「南東部と東部の前線で480平方キロ奪還」とウクライ…
  • 9
    「地獄を見る」のは米国か──イラン地上侵攻なら革命…
  • 10
    健康を守るはずのサプリが癌細胞を助ける? 思いがけ…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 3
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 4
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文…
  • 5
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 6
    バリ島沖の要衝で「中国製水中ドローン」が回収され…
  • 7
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 8
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 9
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公…
  • 10
    第6回大会を終えて曲がり角に来たWBC
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中