最新記事

サル痘

サル痘は性感染症ではないがキスなど濃厚な接触には注意を──CDCガイドライン

2022年6月14日(火)17時50分
佐藤太郎

MarioGuti-iStock

<米国疾病対策予防センターとLGBTQコミュニティは、サル痘に関する情報を発信している。これはプライド・イベントや参加者だけでなく、皆が知っておくべきことだ>

6月に入り米国中でLGBTQコミュニティを祝福するパレードやイベントが続々と開催されている。新型コロナ対策による規制が緩み、和やかな楽しい時間を過ごせるようになった中で迎えたプライド月間だが、新たな公衆衛生の脅威が迫っているのも事実だ。

今年に入り流行の兆しを見せるサル痘。中央・西アフリカ以外、主にアメリカやヨーロッパで800件以上の感染者が出ている。WHOも感染エリアの拡大に警鐘を鳴らしている。サル痘ウイルスは、感染者の皮膚や病変部、体液に直接触れることで感染するとされ、発疹、発熱、倦怠感などを引き起こす。1%〜3%の確率で死に至る。

すべての症例を特定するための追跡調査は不十分だが、アフリカ以外で検出されたサル痘の症例の大半は、男性同士の性交渉で発生している。

サル痘自体は性感染症ではないものの、セックスを含む濃厚な接触によって感染する可能性がある。ゲイやバイセクシュアル男性の間で多く確認されている理由は、特に性感染症の健診を受ける傾向があるため。サル痘は性器に発疹として現れることがあるという。

ヨーロッパ、米国以外の地域でもサル痘にかかるリスクは同じで、発見されない可能性も高い。感染拡大を未然に防ぐためにも警戒は必要だ。

サル痘にまつわる偏見を懸念

プライド・イベントのプロデュース団体であるインタープライドが主催した会合で、米国疾病対策予防センター(CDC)のHIV担当責任者、デミトル・ダスカラキスは、「これは我々がこれまでに扱ってきたケースと同じ。大して特別なことではありません」と話す。

発疹が出たら受診することが重要というメッセージを広めることは、ゲイ・バイセクシャル男性の間だけでなく、それ以外の人への感染を抑制する役割を果たす。「このようなことを伝えるのに、これほど適した時期はないと思います」と、ダスカラキス。

インタープライドの共同代表であるジュリアン・サンジバンが懸念するのは「サル痘にまつわる偏見」だ。「この病気は誰もが感染する可能性があるもの。たまたまプライド・シーズンで、多くのコミュニティメンバーが集っているだけ」と言う。

サル痘を避けるには

現状では、予防接種などが役に立つという兆候はないし、サル痘に対する完全な免疫を獲得するのに時間がかかると考えられる。また、サル痘の検査能力は限られているため、イベントでの参加者のスクリーニングも非現実的だ。

CDCとLGBTQコミュニティは、サル痘に関する情報を発信・共有している。これはプライド・イベントや参加者だけでなく、皆が知っておくべきことだ。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

スイス中銀、第1四半期の利益が過去最高 フラン安や

ビジネス

仏エルメス、第1四半期は17%増収 中国好調

ワールド

ロシア凍結資産の利息でウクライナ支援、米提案をG7

ビジネス

北京モーターショー開幕、NEV一色 国内設計のAD
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴らす「おばけタンパク質」の正体とは?

  • 3

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗衣氏への名誉棄損に対する賠償命令

  • 4

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 5

    マイナス金利の解除でも、円安が止まらない「当然」…

  • 6

    ワニが16歳少年を襲い殺害...遺体発見の「おぞましい…

  • 7

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 10

    ケイティ・ペリーの「尻がまる見え」ドレスに批判殺…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 5

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中