最新記事

韓国

韓国、トラック運転手スト長期化で約1670億円の経済損失 火力発電用石炭の輸送阻止も

2022年6月14日(火)11時52分
ストライキをする韓国のトラック運転手たち

トラック運転手によるストライキで韓国の物流に影響が広がる中、労働組合側は6月13日、政府が最低賃金保証の要求を受け入れない場合は発電所への石炭輸送を阻止する可能性について検討していると明らかにした。京畿道義王市の港湾で撮影(2022年 ロイター/カメラマンの名前)

トラック運転手によるストライキで韓国の物流に影響が広がる中、労働組合側は13日、政府が最低賃金保証の要求を受け入れない場合は発電所への石炭輸送を阻止する可能性について検討していると明らかにした。

労組「貨物連帯」に所属する運送業者のストはこの日が7日目。要求を通すために発電用石炭の輸送阻止以外に石油化学コンビナートの物資の搬出入を拒否して閉鎖に追い込むなど複数の選択肢を検討している。

労組トップはロイターに、全羅北道群山市にある発電所への石炭輸送を完全阻止する検討を行っていると明らかにした。発電所の名前は伏せた。その上で「そのような状況にならないことを願っている」と述べた。

当該の発電所への石炭輸送が停止しても韓国全体の発電量への影響は限定的とみられる。

産業界の損失12億ドル

一方、韓国の産業通商資源省は13日、国内の自動車、鉄鋼、石油化学、セメントなどの産業がトラック運転手のストの影響で累計1兆6000億ウォン(12億4000万ドル)の損失に直面していると試算した。

労組は燃料価格高騰に抗議すると同時に、年内に廃止される予定の最低賃金を保証する補助金制度の延長を要求している。これまで政府と4回の会合を開いたが、妥協点は見いだせていない。

労組トップは石油化学施設の物流はこれまでのところ遮断していないが、政府が交渉に前向きな姿勢を示さなければ「再考」することになると語った。

物流停滞で鉄鋼大手ポスコは出荷できない製品の保管場所がなくなり一部工場の操業を停止しており、韓国自動車製造業者協会によると今月8─11日に自動車5400台分の生産機会が失われた。現代自動車 は一部生産ラインの操業を縮小している。

韓国石油化学工業協会によると、蔚山、麗水、大山の各都市にある大型石油化学コンビナートがストの影響を受けており、工場からの製品出荷が平均で90%落ち込んだと発表した。

同業界筋はロイターに、主要設備のナフサ分解炉の稼働率は現時点で変わっていなが、ストが続けば一部企業は週内に操業停止を余儀なくされると明かした。

サムスン電子、SKハイニックスなど半導体メーカーの生産が混乱しているという報告はまだない。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2022トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【話題の記事】
・ベトナムと韓国の歴史問題「棚上げ」の思惑はなぜ一致したか?
・地面に信号! 斜め上を行く韓国の「スマホゾンビ」対策が話題に
・露骨な男尊女卑で逆転勝利した韓国「尹錫悦」新大統領は、トランプの劣化版


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

パレスチナ支持の学生、米地裁判事が保釈命令 「赤狩

ワールド

イラン、欧州3カ国と2日にローマで会談へ 米との核

ビジネス

米関税で見通し引き下げ、基調物価の2%到達も後ずれ

ワールド

豪総選挙、与党が政権維持の公算 トランプ政策に懸念
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 2
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 6
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 9
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 10
    中居正広事件は「ポジティブ」な空気が生んだ...誰も…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 7
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 8
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 9
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 10
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中